2025年1月下旬、日本中央銀行(日銀)は政策金利を0.5%程度に引き上げる追加利上げを決定し発表した。
利上げは2024年7月会合以来となる。
長い期間マイナス金利の中で暮らしてきた日本国民の多くが相次ぐ利上げの決定に戸惑っていることだろう。
私は今後の経営についての影響も相談したいと思い、日曜日の夕食に顧問税理士の天海さんを招いた。
「天海さんのおっしゃっていたようにこの1月に追加利上げとなりましたね」
「今回は特に事前のリークがわかりやすかったから市場は完全に織込み済みだったわい。一時的に1ドル154円台まで円高は進んだが、やはりすぐに反発しとる。この歴史的な円安状態はそう簡単には解消されないことが明らかになったの」
「私も植田総裁の記者会見をずっと聞いていましたが、消費者物価を押し上げている中心は第一の力と呼んでいる原油価格や円安のようですね」
「原材料費の上昇を要因とするコストプッシュ型のインフレじゃな。しかし、事前のヒアリングで賃上げを実施すると答えた企業が多かったことも追加利上げの後押しになったようじゃ」
「このタイミングであれば追加利上げをしても経済の混乱は起こらないと見越したわけですか。大手のメインバンクは預金金利を0.2%まで引き上げると発表していますので、利上げの恩恵もありますしね」
「全体の試算結果ではプラス効果がマイナス効果を上回るとしているレポートもある。問題は世代によって大きな開きがあることじゃ」
「世代による格差というのは、世代によって利上げの恩恵が異なるということですか」
「今回の0.25%の追加利上げで、住宅ローンの金利は間違いなく上がる。変動金利であれば0.35%から0.6%前後まで金利が上昇するじゃろう。資産残高が負債残高を下回っているような現役世代であればマイナスの影響の方が大きい」
「それはどのくらいの金額になりますか?」
「あくまで想定じゃが、平均して預金利子収入が年間1.3万円増で住宅ローンの利払いが年間2.8万円増じゃから結果年間1.5万円のマイナス。しかし20歳台では年間マイナス4.3万円とマイナス幅は大きくなる。30歳台でもマイナス3.8万円という資産じゃ」
「マイナス分は賃上げで補うわけですね」
「すべての企業で賃上げされるわけではないし、分野によっては以前のままの賃金ということもあろうからそう言い切れぬな」
「植田総裁の話を聞いているとまだ追加利上げを行う可能性を示唆していましたね。年内あと2回の追加利上げで金利1.0%も現実味を帯びてきています」
「なにせ円高に振れなければ物価上昇を食い止められないからの。ただ、アメリカのトランプ大統領の思いきった経済政策がどのような影響をもたらすのか予想できない。その効果によっては追加利上げもどうなることか」
「子どものいる世代が苦しい生活を強いられるようになると、塾業界としては厳しいです。子どもの教育にお金を費やす家庭がさらに少なくなりますからね」
「家計をどうやりくりしていくのか、これまでよりも慎重になるのは避けられないじゃろう。だが、子どもの教育費を後回しにするかどうかは別じゃ。子どもの将来を考えた際に、この厳しい社会で生き抜いていくためにはグローバルな世界で通用する力が必要となる。投資の神様であるウォーレン・バフェット氏の言葉にも
『インフレへの最大の対応策は、
依然として自分自身の稼ぐ力を高めることだ。
ベストな投資は
あなた自身を発展させることだ』
とある。
むしろ今まで以上に教育に投資し、
子どもをより高みへ成長させたい
という意識が強まる好機かもしれぬぞ」
「その点が教育業界の今後のアピールポイントにもなるわけですね!」