グローバリゼーションという視点を取り入れて、積極的に海外に住む日本人へのレッスンをコマーシャルしていくと、不思議なもので日本に戻ってきた帰国子女からの問い合わせも増えてきた。
最近は学校自体もグローバリゼーションの流れを汲んで、すべての授業が英語で行われているケースも珍しくない。
もちろん定期試験もすべての科目が英語の問題文で出題されている。
今日も顧問税理士の天海さんと昼食を共にしたのだが、その際に「英語による数学の授業への対策」について話題になった。
「東京の港区にある開校3年目の中高一貫校に帰国子女用のコースがあるのですが、ここに在学している生徒の対応に悩んでいます」
「そこもやはりすべて英語での授業なのか?」
「そうですね。使用しているテキストも見せてもらいましたが、日本語は一切使われていません。単元テストもかなり頻繁に行われていますがやはりすべて英文です。代数の分野のテストを見せてもらいましたが、どうしてそういった計算結果になるのかを英語で説明する問題が多くて驚きました。日本のように計算だけできたら次の単元へ進めるという仕組みではないですね。国によって教育の中身がここまで違うものなのかと初めて知りましたよ」
「日本人の生徒がそういった問題に対応できているのかが興味深いの」
「それがですね、採点方法が日本と異なりマルの代わりに✔なんです。不正解の場合は×。最初見たときは全部✔になっていて0点なのかとビックリしましたよ。実際はすべて正解していました。その辺りから仕組みが違いますからね。生徒は当然のような顔をしていましたが」
「ということは満点ということか。凄いの」
「中学受験時の必要資格が英検準2級ですから、英語自体に困ることはあまりないようです。教科によって英語の発音に癖のある教師がいて、そういった場合はわかりにくいと言っていました。ネイティブな英語の中で育っているだけにむしろ教師への評価が厳しいですよ」
「たくましいものじゃな。しかし、はじめさんは日本語でレッスンを行っておるのじゃろ?」
「今は数学のレッスンのみ受講していて、私が日本語で対応しています。ひとまず今の学年の数学内容はすべて教えきったのですが、はたしてこれでいいのかと疑問は感じてますね。例えば空間図形の名称についていろいろ覚えてもらっていますが、実際に学校で授業を受ける際は英単語ですし、定期試験も英語。大学受験すら欧米の大学を目指しているので英語なんです」
「そうなると日本語で学ぶ意義があまりないの」
「先方のご家庭からは特にまだ要求はないのですが、私自身としては英語を使用してのレッスンに切り替える必要があるなと感じています。ただし、英語での数学レッスンはやったことがありませんから負担は大きいですね」
「20年以上続けてきたスタイルを変えるのはなかなか容易なことではない。そういった生徒の受け入れを拒否するという選択肢もあるが」
「しかし、これからの時代はそれが基準となるのかもしれないです。というより、日本の子どもたちが海外との競争していく上で必要な教育だと思います。であれば、教育を提供する私たち講師が変わらなければいけません」
「さすがはじめさんじゃな。立派な心がけじゃ。アイルランドの文学者であるジョージ・バーナード・ショー氏の言葉に、
『進歩は変化なしには不可能であり、
考えを変えられない者は
何も変えることはできません』
とある。
変化を柔軟に受け入れる姿勢が、
今後の企業を発展させていくための
重要なカギを握っているのは間違いないの」
「まずは英語用のテキストが再入荷待ちなので、届き次第早速勉強していきます!」