2025年も5月下旬。
気がつけば2025年も半ばまできている。
ここから先は例年の猛暑がまた続くのかと思うと頭が痛いのだが、それ以前に注意しなければいけないことがある。
それがこの時期特有の「五月病」だ。
ゴールデンウィークが明けると同時に急に発生するやる気の低下。
今年のゴールデンウィークは飛び石だったので一般的には大型連休ではない。
しかし、私の経営する学習塾は生徒の学校のある日も特別に休日とし、4月26日(土)から5月6日(火)までの11連休とした。
今年から正社員になった酒井と石川といった社内待遇強化の一環だ。
ただし自習室は開放して私が対応していたので、レッスンがないだけで生徒たちは勉強していたから長期お休みの感覚はないだろう。
それでも塾生の中には4月当初と比較してやる気の低下が著しい生徒が数人いる。
これは毎年の現象で、入学や新学期を迎えての環境の変化からくる疲れやストレスの影響が大きい。
5月に入り慣れてくるにつれ緊張感が緩み、積み重なった疲労感が一気に押し寄せるのだ。
これがやる気低下の主な原因で、五月病と呼んでいる。
連休明けからレッスンに復帰した講師陣には、この時期の生徒のささいな言動も見逃さないようにと指示を出した。
五月病が原因で1学期の中間テストを失敗するだけでなく、状況によっては不登校や勉強をやめてしまう事態になりかねないからだ。
周囲の気づきがあれば対策の打ちようはいくらでもある。
個別に面談形式で話をするだけでも状態は改善する。
信頼できる相手と話をするだけでも
気持ちが軽くなるからだ。
だからこの時期の面談は学習面談というよりも、生徒に話をさせるために徹底的に聞き手に回ることが重要だった。
実はこれは顧客である塾生に対してのみ当てはまる事例ではない。
働く従業員にも該当する話だ。
例年は学生アルバイト講師ばかりなのであまり気にとめていなかったのだが、酒井と石川が正社員となり毎日昼間から出社してくるようになると、雰囲気がいつもと違うだけで気にかかる。
石川はそういった様子はうかがえないが、酒井については連休明けから明らかに身体が重そうな感じで、表情に覇気がない。
生徒に対してもいつもの酒井らしい元気が感じられなかった。
従業員に対しての五月病対策は初めての試みだったが、このまま放置しておくと塾生に悪影響を与える恐れもあったので、迅速に対応することにした。
塾生が来る前の時間を使って酒井と話をする。
話を聞くと、やはり入社して4月から頑張りすぎて心身共に負担を感じていたようだ。
ほぼ一方的に酒井にしゃべらせて表情が和らいだところで、「焦らずゆっくりで構わない」という点を伝えた。
うなずいていた酒井が涙目だったことに少し驚いた。
知らず知らずのうちにそこまでプレッシャーを感じていたことに気がついたからだ。
五月病は酒井のようにひたむきで、真面目な人ほど陥りやすいのかもしれない。
心底このタイミングでしっかりと時間を確保して話をして良かったと思った。
以前に顧問税理士の天海さんからこんなアドバイスを受けたことがある。
ドイツの小説家トーマス・マン氏の言葉で
『会話は文明そのものである。
言葉は人と人を結びつけ、
沈黙は人を孤立させる』
というものだ。
五月病は4月の環境変化の際に頑張りすぎた反動も要因らしい。
頑張りすぎて煮詰まって
孤独感が増しているのであれば、
コミュニケーションは重要な処方箋だろう。
五月病対策には周囲の気づきが大切だが、それは塾生だけではなく、一緒に働く仲間に対しても必要なのだ。