※これは独立したての経営者であるマモルと先輩経営者のショウの物語です。
ショウ「マモルもいろいろあって大変だろうけど、今日は焼肉食べて、乗り切るためのスタミナをつけていこう!」
マモル「いつもお気遣いいただいて、ありがとうございます」
ショウ「俺も経営者としてスタートした時には波乱の連続だったからな。顧問税理士の方に相談したり、アドバイスもらったり、励ましてもらったり、時には叱ってもらったりして乗り越えた経験があるよ」
マモル「実際に始めてみると、想像していた以上にたくさんのハプニングがあるものですね。先輩のような経験者や成功者からアドバイスしてもらっていなかったら、自暴自棄になっていたと思います」
ショウ「はははは。また、ずいぶんと弱気になったものだな。世の中、そんな簡単には思った通りに進まないだろう」
マモル「実際のところよくわからなくなってきてますね。経営者として、リーダーとして、従業員に何を語ればいいのか、何をすればいいのか……。コミュニケーション力も、マネジメント力も、決断力も行動力も、人間としての魅力も、僕は欠けているです」
ショウ「ああ、確かに自暴自棄になってるなー。具体的に何を語って、何をするのかは、状況によって違うだろうから、俺がマモルのように迷っていた時にアドバイスを受けた言葉を伝えておくよ」
マモル「はい。宜しくお願いします」
ショウ「江戸時代の農政家、二宮尊徳氏の言葉で、『大事をなそうと思ったら、まずは小さなことを怠らず勤めなければならない。小が積もってはじめて大となるのである。失敗する人の常として、大事をなそうとして小事を怠り、難しいことを心配して、やりやすいことを勤めないから、結局大事をなすことができないのだ』というものがある」
マモル「小が積もってはじめて大となるですか…… 目標を達成することばかり考えていて、小事がおろそかになっていたのかな」
ショウ「まずは、相手の目を見て、名前を呼んで、元気に挨拶することからだな」
マモル「完全に新入社員みたいですね」
ショウ「迷った時には初心に戻るのが一番さ。できることを丁寧に、一生懸命にする。そこから信用が生まれてくる。やがて小事は中事になり、中事は大事になるさ。大きな仕事も回ってくるようになる」
マモル「僕がそうしても、従業員はどうなります? 何を語ればそれに気づいてくれるんでしょうか?」
ショウ「カトリック教会の聖人で、マザー・テレサ氏がこんな話をしている。『話すことは少なくしましょう。説教して聞かせても、それが人と触れ合う場にはなりません。それならばどうすればよいでしょうか。ほうきを持って、だれかの家をきれいにしてごらんなさい。それが充分に語ってくれます』とね」
マモル「ほうきを持って、だれかの家をきれいにする、ですか」
ショウ「俺は同じことを言っているのだと感じたね。小事を大切にすること、リーダーだからと力まず、まずは小さな行動を起こすこと。それが見ている人には伝わって、感化力となっていく。会社の評判もきっと同じだと思うぞ」
マモル「僕は焦っているのでしょうか?」
ショウ「不安を感じる力は経営者には必要だよ。ネガティブ思考がない楽天家の経営者の会社は、改善されたり、ブラッシュアップされることがない。これでいいのか? もっとよくするためには何が必要だ? と、経営者は常に自問自答し続けなければいけないと思うが、その不安を従業員に見せてはいけない。マネジメントで大切なのは、危機感を煽ることではなく、従業員がパフォーマンスを発揮できるような環境をいかに作るかってことだからな」
マモル「そうか……。確かに僕もそう思います。いつも大事な視点に気付かせていただいて、ありがとうございます! 本当に先輩には感謝です」