※これは独立したての経営者であるマモルと先輩経営者のショウの物語です。
ショウ「こうやってマモルとゴルフをするのは久しぶりだな」
マモル「そうですね。ただ、もう秋ですけど、僕は今シーズン初ラウンドなんですよ」
ショウ「どうだい? 久しぶりのラウンドの感想は」
マモル「こんなに下手だったのかと、自分でも驚いています」
ショウ「ブランクがあるから仕方がないか?」
マモル「ええ。以前にどうスイングしていたのか、わからなくなってしまいました。リズムもバラバラだし、ダフったり、トップしたりばかりですね。ここまでクリーンショットはほとんどありませんよ」
ショウ「リズムはどうか知らないけど、さっきからずっとヘッドアップしっぱなしだな」
マモル「ヘッドアップですか? 自分では気づきませんでした」
ショウ「目標を狙うのはいいけど、インパクトの瞬間はボールを見ないとな。目標ばかりを気にしているから、頭が早く上がって、しっかりボールを捉えられていないんだよ」
マモル「そうか。意識してスイングしてみます。どうも結果を求めて焦ってばかりいるのが習慣になってしまっているようです」
ショウ「そうか。ゴルフはメンタル面の影響を受けやすいスポーツだからな。自分自身を見つめるにはいい機会でもあるぞ」
マモル「結果を求め過ぎて、今集中しなければならない仕事が、おろそかになっていたのかもしれません。ビジネスシーンでもヘッドアップしていたのかも」
ショウ「焦る気持ちはわかるけど、目標を決めたら、ボールを打つことに集中しないとな。そうしたらパフォーマンスを発揮できる。良い結果はついてくるさ」
マモル「僕は仕事でも、このラウンドと同じで、とても基本的で、大切なことができていなかったんでしょうね。だからどんどん依頼も減ってきて、売り上げも落ちているんでしょう」
ショウ「仕事が減ってきているのか?」
マモル「はい。あれだけ忙しかったのがウソのようで、今は暇を持て余しています」
ショウ「なるほどな」
マモル「前回、先輩に辛抱が肝心だとアドバイスをしていただいたのが、励みになっています。じゃないと、プレッシャーとネガティブな思考に押しつぶされていましたね。資金繰りも苦しい状態なので」
ショウ「大丈夫か? そんな時期にゴルフしていて」
マモル「いい気分転換になればと思いまして。ここまではストレスの溜まるゴルフが続いていますが…… でも、先輩にヘッドアップを指摘されて大事な気づきを得ることができました」
ショウ「その切り替えは大切だよ。苦しんでいる時こそ学びのチャンスでもあるからな。アメリカの作家のアーネスト・ヘミングウェイ氏は、釣り好きで有名だったが、こんな言葉を残している。『釣れないときは、魚が考える時間を与えてくれたと思えばいい』とね」
マモル「考える時間、ですか」
ショウ「厳しいときも、それをどう受け止めるかで、考え方も過ごし方も変わってくる。前向きに受け止めることで、実はその後の成功に繋がる大事な時間になるものさ」
マモル「前向きな姿勢が大事なんですね」
ショウ「ああ。アメリカの医師オズワルド・アベリー氏の言葉には、『転んだらいつでも、何かを拾いなさい』というのがある」
マモル「気づきを大切にして、今やれることにしっかり集中します」
ショウ「おお、ナイスショット! それが以前のマモルのいい時のリズムだな」
マモル「今までは無意識でやっていましたが、これから先は意識して取り組んでみます。再現性が高まって、安定してくるような気がしてきました」
ショウ「表情も良くなってきたな。よし、ここから巻き返しだ。18ホールまではまだまだチャンスがあるぞ!」