※これは独立したての経営者であるマモルと先輩経営者のショウの物語です。
ショウ「もしもし、どうだいマモル。橋本さんはその後、どうなった?」
マモル「先輩、いつも気にかけていただいてありがとうございます。先輩からいただいたアドバイス通りに、将来の夢というか、今後の展望について橋本さんと話をしました」
ショウ「それで? 橋本さんが退職するって言い出した件は?」
マモル「とりあえず保留の状態ですね。ただ……」
ショウ「ただ? ただどうした?」
マモル「僕がそういったことを考えているということに驚いたようでした。内容云々は別にしても、僕がそこまでこの事業に熱意を持っているとは思っていなかったようで、喜んでくれてる感じでしたね。橋本さんの笑顔を初めて見ましたよ」
ショウ「マモルのその熱意が伝わったということは、やはり橋本さんは不器用なだけで、モチベーションはかなり高い人だということじゃないか?」
マモル「そうですね。橋本さんのこの仕事にかける思いのような話も聞くことができました。お客様に心底満足して欲しいという思いが強いんです。だから妥協しないし、時に意見が衝突すると」
ショウ「なるほど。ただ、業務改善のコンサルティングをしている以上は、相手方にしっかり意図を理解してもらう努力も必要だろうがな。やはり橋本さんは不器用だなー」
マモル「ええ。そこを橋本さんも反省していました。でも、目標と情熱がある以上、橋本さんの反省は必ず改善行動に繋がるでしょうし、成功にも結び付くと僕は感じました」
ショウ「うん。やはり職場の人間同士、腹を割って話をすることは大切だな。今回の件でチームワークは向上したんじゃないのか?」
マモル「だといいんですが……」
ショウ「なんだ、まだ不安は払拭できないのか」
マモル「それは、現状の経営状態では厳しく見通しを立てていく必要がありますからね。同業の知り合い何人かからは、それだけの逆風の中では経営状態を改善していくのも、売り上げを伸ばしていくのも難しいんじゃないかと指摘されています」
ショウ「ほう。逆風ね」
マモル「周囲にそう言われ続けると、不安は大きくなっていきますよ。そんな従業員はさっさと見切りつけて解雇すべきだという意見ばかりですから」
ショウ「でも、マモルは橋本さんと真正面から話をして、橋本さんにも熱意があることに気が付いた。そうだろ?」
マモル「まあ、そうですけど」
ショウ「イギリスの政治家でノーベル文学賞も受賞しているウィンストン・チャーチル氏の言葉に、『凧がいちばん高く上がるのは、風に向かっているときである。風に流されているときではない』というのがある」
マモル「風に向かっているとき…… 逆風のアゲンストのときですか」
ショウ「逆境こそが成長の糧だ。飛躍のときだよ」
マモル「とてもポジティブな考え方ですね」
ショウ「でも根拠の無い話ではない。そうだろ? マモルは今後の橋本さんに期待している。PDCAのサイクルも意識できている。これからだろ」
マモル「後がない状態ですが…… 背水の陣ですよ」
ショウ「うちの税理士とも相談してみるといい。資金面の工面についてアドバイスを受けておくべきだ。できるだけ他人に任せることができるタスクは任せてしまって、最優先のタスクに全力を注げるようにすべきだな。それで俺もかなり業績を盛り返すことができたよ」
マモル「わかりました。タスク管理をもう一度見直して、税理士さんにお願いできる部分は依頼していきます。この際、必要ないタスクはすべて削除してしまって、今、一番重要なことに集中しますよ」
ショウ「よし、善は急げだ。早速、うちの税理士に連絡してみよう」