※経営者として独立して間もないマモルが、先輩経営者ショウから成功に繋がるアドバイスを受けて成長していく物語です。
今回のポイントは、『何に対して一生懸命になるのか』です。
マモル「先輩とこうしてゴルフするのも久しぶりですね」
ショウ「勢いのある競合相手が登場して、ゴルフどころじゃなかっただろう?」
マモル「ええ、その通りです」
ショウ「まあ、たまには息抜きのひとつもしないと煮詰まってしまうからな。いい気分転換になるんじゃないか」
マモル「ご心配いただきありがとうございます。ただ、状況は少し変わってきましたね」
ショウ「そうなのか? マモルの方か? それともあっちか?」
マモル「向こう側ですね。対応に不満を抱いた顧客がひとり、こちらに戻ってきたんです」
ショウ「ほう。それは興味深い話だな。いったい何に不満を持ったんだ?」
マモル「とにかくたくさんの客を回すために、ひとりひとりへの対応が手薄になっているとおっしゃっていました。僕の会社のコンサルティングについて尋ねられることも多く、熱を入れている方向に違和感を覚えたそうです。まあ、あくまでもその方個人の見解ですが」
ショウ「なかなか当初の思惑通りには新規顧客が増えないもんで、じれてきたんだな。マモルが手堅く今いる顧客に親身に対応している成果だろう。おそらくこのままのペースだと夏場までのノルマに到達しないと見越して焦っているんじゃないのか」
マモル「会社には会社の方針というものがあるので、僕がとやかく口出しすることではないんですが、一生懸命に取り組んでいるものの、それが顧客に伝わっていないように思えますね。一生懸命になればなるほど逆効果になっているようです」
ショウ「それは顧客満足の視点を欠いた対応になっているからだろう。顧客を伸ばし、会社の売り上げをアップさせることも大事だが、それ以上に何を提供できるか、どれだけ顧客を満足させられるのかへのこだわりが重要だよ。どうもそのあたり、会社の信念が感じられないな。これは必ず顧客に見抜かれるぞ。そして口コミで広がる。口コミの効果はポジティブなものより、ネガティブなものの方がずっと速く広く広まるからな」
マモル「僕たちとしてはその話を聞いて、より一層、今いる顧客を大切にしようと決意を固くしたところです」
ショウ「これは意外に早く、あちらさんが根負けするかもしれんぞ」
マモル「相手の失敗を期待するのではなく。相手の失敗から学ぼうという姿勢です」
ショウ「それがいい。その方が今まで以上に顧客対応に親身に、一生懸命になれるだろう。そうだ、ホンダの創業者、本田宗一郎氏の言葉を思い出したよ」
マモル「顧客対応に一生懸命になれって話ですか?」
ショウ「本田氏は、
『単なる一生懸命には
なんら価値がない。
一生懸命が価値を持つためには、
正しい理論に基づくことが前提条件だ』
と述べている。顧客対応についても同じことが当てはまるんじゃないか」
マモル「会社に与えられたノルマを達成しようしようという思いが強くなりすぎると、本来の使命から少しずつずれていってしまうのかもしれないですね」
ショウ「何に対して一生懸命になるのかというこだわりは、まさに会社の根幹、核のような存在だな。いくら価格が安くても、人脈があっても、肩書や経歴が凄くても、根っこがしっかりしていないと簡単に揺らぐってことさ」
マモル「そうですね。お客様ひとりひとりにしっかりと向き合っていかないと、伝わらないことはあると思います」
ショウ「じゃあ、今日のゴルフも一打一打大切に打つか。スコアは二の次だな。一打一打大切に打つことで、自然とスコアも良くなっているかもしれん」