※経営者として独立して間もないマモルが、先輩経営者ショウから成功に繋がるアドバイスを受けて成長していく物語です。
マモル「先輩、お待たせしました。ちょっと打ち合わせに時間がかかってしまいまして」
ショウ「日曜なのに休まず仕事か。働き方改革まっただ中のこのご時世によくやるなー」
マモル「会社には出勤していないですよ。上田さんを僕の自宅に招いての食事会です」
ショウ「食事会ね。で、仕事の話をしているんだろ? 上田にCRM系ITソリューションのプロジェクトリーダーを任せるっていう話だったからな」
マモル「会社ではなかなかそこまでの話ができていなかったものですから、この休暇を有効利用させていただきました」
ショウ「休暇ねー。しかし、上田のことだから断っただろう。ただでさえ職場の人間関係に怯えているんだから、チームをまとめる立場になんてなりたくないはずさ」
マモル「ええ、見事に断られました」
ショウ「だろうな。仕方がない。とりあえず上田だけでもレンタル移籍を解消しよう。これ以上マモルに迷惑はかけられない」
マモル「最初は、です」
ショウ「最初は? どういう意味だ」
マモル「ですから、最初は上田さんに断られました」
ショウ「ん? というと、最後は受けたのか? 上田がプロジェクトのリーダーになることを?」
マモル「はい。先ほど帰宅する際に『ぜひ、やらせてください』と」
ショウ「おいおい、本当かよ。いったいどんな魔法を使ったんだ? 金か?」
マモル「無茶言わないでください。車のローンに、自宅のローンに、会社設立のローンもある身ですよ。人に一大決心させるほどのお金を積めるわけないじゃありませんか」
ショウ「うーん…… 確かに金で動く男でもないしな…… マモルがやらなきゃクビだぞと脅せるわけもないし……コーチングでそこまで人を変えられるのか?」
マモル「いえ、これはコーチングの手法とはまた別ですね。もちろん、食事会では上田さんにはたくさん話をしてもらいました。場に居るのが僕と妻だけでしたから話もしやすかったと思います。ただ、帰る前に自宅を案内しました。以前、僕が独りで会社を設立したときにオフィスとして利用していた部屋も見てもらったんです」
ショウ「今の事務所を借りる前は、マモルは自宅で仕事を受けていたからな」
マモル「僕は失敗することを恐れて、なかなか起業、独立に踏み出せなかった。経営者の器でもないと思っていましたし、失敗するイメージしか持てませんでしたからね。でもそこで背中を押してくれたのが先輩でした」
ショウ「まあ…… そうなるか」
マモル「起業して失敗することもありましたが、失敗はいくらでも取り戻せることも学びました。起業前は、想像の中で失敗への恐怖はどんどん膨らんでいきましたけど、実際に行動してみるとそうではなかった。恐怖を育んでいたのは行動しない自分だったんです。そこで先輩からいただいた言葉の意味がわかりました」
ショウ「俺からの言葉?」
マモル「アメリカの第32代大統領、フランクリン・ルーズベルト氏の言葉です」
ショウ「ああ、思い出した。
『われわれが
恐れなければならない
ただひとつのことは、
恐怖そのものである』
…… か」
マモル「はい。恐怖に支配されてしまうと、本来できることもできなくなる。できるようになるかもしれないこともできなくなる。希望や可能性を自分で潰してしまうことになるんです。僕はチャレンジすることで克服することができた。先輩に感謝していると、その話を最後に上田さんにしました」
ショウ「なるほど。コーチングで類似性が高まっている相手だけに、マモルの言葉は響いたか」
マモル「実際は、先輩の言葉ですが」
ショウ「アメリカ大統領の言葉だよ」