※経営者として独立して間もないマモルが、先輩経営者ショウから成功に繋がるアドバイスを受けて成長していく物語です。
マモル「これが先輩のお話されていた深川飯ですか?名前からじゃあ、まったく料理がイメージできませんでしたが、海鮮系の具材がいろいろ入っているんですね」
ショウ「そうだな、江戸時代じゃこの辺りは深川浦での漁が盛んだったのさ。その名残だな。当時のまかない飯がルーツだそうだ。たまには下町情緒を味わうのもいいだろう?」
マモル「美味しいです!しかし、先輩はいろいろなお店を知ってますよね。僕なんて、美味しかったらそのお店ばっかり通っちゃうんで、新規開拓がなかなかできないんですよ」
ショウ「確かにマモルはそういった面があるな。昔から手堅いというか、冒険心に欠けるというか…… 仕事ではかなりアグレッシブになってきたんだが、根本はそう簡単には変わらないか」
マモル「美味しい料理を食べれればいいので、無理なチャレンジはしない傾向はありますね。チャレンジして美味しくなかったら無駄な時間とコストを費やしたことになるので」
ショウ「ある意味、合理的なのかもしれないな。しかし、それじゃあ人生つまらないだろう。いろいろ食べてみないとわからんぞ。きっとそれでマモルの料理の腕前も上がるだろう」
マモル「先輩にそう指摘されて、余計に悩んできました」
ショウ「悩む?何の話だ。レシピでも増やそうってことか?」
マモル「来年度入社する学生の最終選考のことです。一応無事に全員とオンライン面接を行うことができたんですが、最後の決め手をどうすべきか悩んでいるんですよ」
ショウ「そんなに優秀な学生がマモルの会社の面接を受けているのか?」
マモル「そうですよ、皆さんとても優秀でした。その中で特に気になったのが2人いるんです。ひとりは明らかに積極果敢な女性で、もうひとりはちょっと冴えないですが、面白い発想を持っている男性がいるんです。オンラインでの受けはダントツ女性の方が上なんですが、どうにもこの男性が気になってしまって」
ショウ「ほう。だったら2人雇えばいい話だろう」
マモル「顧問税理士さんとも話はしているんですが、人件費は今の状況だと厳しいんですよね。成果を出せるようになるまでにはかなり時間もかかるでしょうし」
ショウ「その男の何が魅力的なんだ?」
マモル「見た目は脳天気な感じで、話をしている内容も大半は支離滅裂です」
ショウ「それはダメなんじゃないのか?」
マモル「ただ、会社にこう貢献したい、社会にこう貢献したいっていう思いは一番伝わってくるんです。知見を広めるためにいろいろな世界を経験しているようで、グレーゾーンにも踏み込む行動力がありますね。しかし、僕の苦手なタイプなんですよ。周囲の空気も読まずにガツガツいくところとかありますし…… 自分を絶対に選ぶべきだと、超直球で自分で売り込んできますからね」
ショウ「なるほど。なかなか面白い人材かもしれないな。食わず嫌いのマモルが選ぶとも思えないが、とりあえずそのがむしゃらさを聞いて、日本の未来を変えた幕末の志士である坂本龍馬氏の言葉を思い出したよ」
マモル「あの坂本龍馬ですか?」
ショウ「ああ。彼はこう述べている。
『恥といふことを打ち捨てて、
世のことは成るべし』
とね。目標を達成するためには恥も外聞も捨てよということだな。それだけの勢いが必要だということだろう。これから始まる激動の時代を生き残っていくためには若手のそういった力が重要になるのかもしれないな」
マモル「実に偶然だと思いますが、その学生も坂本というんですよ。さらに迷う感じになってしまいましたね」