※経営者として独立して間もないマモルが、先輩経営者ショウから成功に繋がるアドバイスを受けて成長していく物語です。
マモル「ハアァ……」
ショウ「どうした? こんな昼間っからため息をついて。この店のランチ、舌に合わなかったか? だから人気のカルボナーラにすればよかったんだよ」
マモル「いえ、そういうわけじゃ…… このジェノベーゼもにんにくが効いていて、とても美味しかったです」
ショウ「じゃあ、なんだ。仕事の話か?」
マモル「ええ、クライアントが売上激減の対応策としてリストラをすると言い出しまして」
ショウ「人件費削減ね。まあ、てっとり早い打開策だろうな。コロナ禍にかかわらず、経営の厳しい会社じゃよくある話だ。珍しい相談でもないだろう」
マモル「誰をリストラすべきか人選してほしいと」
ショウ「なんだ、そこまでマモルがやるのか? せめて従業員の杉山くんにお願いすればいいだろう」
マモル「杉山もなかなか手一杯な状態ですし、創業当時からのお付き合いあるクライアントですので、僕が直接対応しています。ですからその会社の従業員も知り合いばかりで…… そこから選ぶというのは正直気が重いですね」
ショウ「リストラはする側も、される側も気分は最低だな」
マモル「こうなる前に売上を向上させられたら良かったんですが、思った以上にコロナ禍の影響が長引いています。実は新しい会社で、若手ばかりなんです。なかなか戦力になりきれていないメンバーもいます。人員整理となると、やはりここから手を打つべきかと」
ショウ「若手ばかりね。従業員の数は少ない会社だろ?」
マモル「ええ。起業した経営者ともうひとりのベテランが主力で、後はすべてここ1年~2年で雇った若手です。雇った当時はまさかこんな事態になるとは想像もできなかったとおっしゃっていました」
ショウ「そりゃそうだろうな。しかし、若手ばかりならそこまで人件費もかかってはいないだろう。ようやく仕事も覚えて、これから戦力になる大事な宝じゃないのか」
マモル「それは、そうなんですが。無理をすれば経営者ともうひとりのベテランだけでも、仕事は回せるようです。であれば今はその方がいいのかと」
ショウ「そうなると売上は今以上には伸びないだろうな。マモルは【鬼滅の刃】というアニメを知っているか?」
マモル「凄く人気のあるアニメですよね。僕は読んだことも、観たこともありませんが、とても面白いと聞きます。先輩はアニメ観ているんですか?」
ショウ「もちろん! コミックも全巻電子書籍で購入しているし、アニメもファーストシーズンは全部観た。映画も公開初日に観に行ったからな。初日の公開だけで10億円以上の興業収入だぞ。3日間で45億円を突破している。俺の行った映画館は15分おきに別のスクリーンで上映していて驚いたよ」
マモル「そうなんですか。本当に凄い人気なんですね。でもそれが何か?」
ショウ「今回の映画の話ではないんだが、主人公の竈門炭治郎が実に面白いことを言っていてな。強敵を相手にして最悪な状態に陥ったときの話だ。
『一番弱い人が
一番可能性を持っているんだよ』
(20巻172話)とね。炭治郎はさらに詳しくこう述べている。
『弱い人が予想外の動きで壁を打ち破れば
一気に風向きが変わる。勝利への活路が開く』
伸びしろがあるということは、それを活かすことで状況を打開できる可能性があるということだ。そう考えると、リストラよりもさらに会社を救う策はあるんじゃないのか」
マモル「弱い人の予想外の活躍か…… 確かにまだやり残したことがありそうですね。もう一度、クライアントとよく相談してみます」