【このお話では、サラリーマンを続けていた40歳の松平はじめが、起業に挑戦し、税理士からアドバイスを受けて、成果を出すための大切な気づきをいろいろと得ていきます】
201年春、15年間働いていた大手進学学習塾を退職して、もう半年が経過した。週に2回は職安に通い、自宅にいても毎日のように求人サイトを眺めているが、まったく仕事先が見つからない。
「ここも給料はこれまでの半分か……」
収入は毎月の手取りで40万円以上はあったので、どこを探しても収入減。以前の収入に近いところが見つかったとしても、競合していた学習塾ぐらいだ。
「やっぱり、これまでのキャリアをいかすとなると、教育関係しかないよな」
しかし、子どもたちを商品、講師たちを使い捨ての道具のように考えているような会社ではもう働きたくはない。ひとり躍起になって組織改革を訴えてきたが、結局何も変えられず私は会社を辞めた。そのトラウマがあって、別の学習塾で働くことに及び腰になっている。
そうかといって、授業を通じて子どもたちの笑顔が見られる楽しさや、子どもたちの成長にダイレクトで関われる充実感は、他の仕事では味わえそうにもない。結局仕事先は見つからずに今日も一日が終わる。
そんな悶々とした日々を過ごしていたある日、サイト上で『新規開業白書』というものを目にした。そこには2017年の起業時の平均年齢が記されていた。その年齢は『 42.6歳 』。私とほぼ同じくらいの年齢だということに驚いた。
さらに統計をよく見てみると、
40歳代で起業した割合が34.1%、
30歳代で起業した割合が34.2%と
全体のおよそ7割を占めている。
そこには、生活環境や体力、やり直しなど様々な面を比較していくと、若いうちに起業しておくことに多くのメリットがあるとも記されていた。
「起業か」
起業なんて自分にとっては雲の上の話のようで、まったく今まで選択肢になかった。しかし、自分と同じ年齢やもっと若い人たちが起業に挑戦している現実を知って、起業するということに興味を持った。
そしてamazon創業者であるジェフ・ベゾス氏の
『失敗しても後悔はしない。
でも僕が後悔をするとしたら、
それは挑戦しなかったといだろう』
という言葉と、ディズニーランドの創設者であるウォルト・ディズニー氏の
『単なる金儲けは昔から嫌いだ。
何かをしたい、何かを作りたい、何かを始めたい、
昔から金はそのために必要なものでしかなかった』
という言葉に触発され、私は、起業することを決意した。
そう。組織改革ができないのだったら、自分で起業し、自分の理想とする仕事の仕組みを作り出せばいい。
会社勤めが当たり前だという固定観念を打ち破れた瞬間で、この考え方は私にとってとても新鮮で、魅力的なものだった。
ただし、起業を決意した直後、すぐに大きなハードルに遭遇した。それは、
何をしていいのかわからないということである。
起業するために必要なものは何なのだろう? どこから動き出せばいいのだろう? それすらもわからない。
起業についての勉強はする必要は絶対にある。そのために書籍を購入しなければならないだろう。もしかすると恐ろしく膨大な時間がかかるのではないだろうか。スタート台に立てるのは5年後、10年後になるかもしれない。
だとすれば、そこまでどうやって生活していくのか。結局はバイトするなりして生計を立てなければならないのだろうか。しかもそれでも起業できないかもしれない。
ひとりで考えているとネガティブな想像ばかりをしてしまう。起業はしたい。しかしそのためにどうアクションを起こすべきなのかがわからない。私はまた頭を抱えることになった。