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税理士がサポート!『はじめて起業ものがたり』 「起業って何から始めればいいのか④ 起業のための5W1H」

【このお話では、サラリーマンを続けていた40歳の松平はじめが、起業に挑戦し、税理士からアドバイスを受けて、成果を出すための大切な気づきをいろいろと得ていきます】

 

今回のポイント
 起業する目的の明確化 

 

 

「天海さんって、税理士だったんですか?」

 

「おや、話してなかったかの? そうは言っても、家督は娘に継がせておるから、隠居の身の上じゃよ」

 

確かにいろいろな税理士事務所のホームページを細かく見比べていったが、天海さんの顔は一度も見ていない。引退していたから天海さんの事務所だと気づかなかったわけだ。

 

室内は応接用のテーブルにソファーが向かい合ってふたつ置かれていた。窓側にはデスクがひとつ。そこにパソコンがひとつ。人影もなく、ひっそりとしていた。

 

 

「こっちの部屋はわしのプライベートルームじゃ。断捨離してな、ずいぶんさっぱりしたの」

 

こじんまりした事務所だが、落ち着いた雰囲気で、相談はしやすそうに感じた。

 

「どれ、そこに座って、話でもするかい。お茶のひとつでも出したいところじゃが、あいにくみんな出払っておるからな・・・・・・」

 

「あ、いえ、お構いなく。天海さんは創業にも携わってきた税理士なんですか?」

 

「ああ。この辺りの店の多くは、わしの大切なクライアントじゃな。まあ、早速じゃが、はじめさんはなんで起業したいんじゃ?」

 

「そうですね。長く学習塾で働いてきたので、同じ畑で働きたいという気持ちが強いです。ただ、労働環境が自分に合っていないということもあって、新しい働き口を見つけるよりも、自分のやりたいスタイルで授業を提供していきたいと思っています。そのための起業という選択ですね」

 

「それは、はじめさんが

 

個人事業主として始めるのか、

 

法人としてやっていきたいのか

 

どちらじゃ?それともどこかのフランチャイズチェーンに加盟するつもりなのかな?」

 

まったく考えたことのない項目だった。起業の仕方自体にそんなにいろいろな種類があることを私は初めて知ったのだ。信頼でき、相談できる税理士事務所さえ見つければ、後は簡単に起業できると思い込んでしまっていた。

 

 

「それぞれにメリット、デメリットがある。どんな相手に、どんなサービスを提供していきたいのかでも起業の形態は変わってくるじゃろう。起業する資金はあるのか?創業時の資金調達は大事な点じゃぞ

 

「起業の形態をどうするのかが最初の大きな分かれ道なんですね。まったく考えていませんでした。私はこの近郊の子どもたち、そうですね小学校高学年から高校の受験生までを対象に集団指導を行っていきたいと考えています。ですから物件をひとつ借りて、そこを教室として利用したいです。とりあえず講師は私ひとりです」

 

「なるほど。であれば、最初は個人事業主としてスタートするのがいいじゃろうな。個人事業主で始めて、1,000万を超えると消費税を払うようになるので、そのタイミングで法人化してまた消費税を払わない免税業者になるという手がある。ただし、取引先との関係で法人の方が、信用度が高く見られるから、はじめから法人で始める人もいるな。これはケーバイケースじゃな。塾の場合は、個人名や法人名を前面に出さずに、塾名が表に出るから、生徒や親御さんからしたら個人事業主だろうと法人だろうと気にしないじゃろ。お主の場合は、数年後に規模が大きくなり、売上も1,000万円を超えるくらいになったら、消費税を払うようになるし、人手も増え、社会保険の制度を整えるといった面も考慮して法人化するという方向性だとどうじゃ?」

 

さすが事前に候補に挙げていた事務所のひとつだけあって、話が早い。ここに来る前に比べて、確実に一歩前進している。私が起業するということがまた現実味を増した感じだ。

 

「起業するうえでポイントになるのは、まずは5W1Hじゃよ」

 

誰が誰に対して、

 

いつからどこでどんなサービスを、

 

なぜ提供するのか、

 

というような点でしょうか?」

 

「まあ、そんな感じじゃな。目的を明確化しないと、そこからどう動くべきかも見えてこないからな。後は1Hじゃよ」

 

「How much・・・・・・ ですか?」

 

「そう。そのサービスを開始していくために

 

どのくらいの資金が必要で、

 

どのくらいの融資を受けるべきか

 

という点じゃな」

 

 

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