【このお話では、サラリーマンを続けていた40歳の松平はじめが、起業に挑戦し、税理士からアドバイスを受けて、成果を出すための大切な気づきをいろいろと得ていきます】
今日は天海さんの税理士事務所で、学生講師採用についての相談をさせてもらっている。なにせ従業員の採用に携わることはまったく初めてのことなので、何からどう手をつけていいのかわからない。
「どういった講師に来てもらいたいのか、男性か女性か、大学何年生なのかといった具体的な要望はさておき、まずはどうやって学生講師の募集をするのかじゃ」
「それについては、塾講師専門の求人サイトがありますので、そちらを利用するのと、自分のところの公式サイトに採用についてのページを新たに設けようと考えています」
「求人サイトか・・・・・・ 最近の流行ではあるだろうが、この地域の学生だけを対象にした募集となると効果はどうかの。他の大手学習塾も掲載しているだろうから、パッと見で比較されてしまって、精力的な学生さんは環境や条件の良い方に流れてしまうんじゃないか?」
「確かに大手と比較されると、条件は厳しいですね」
「なにせ、講師の業務が大きく違うではないからの。生徒への指導、採点業務、家庭へのフォローの連絡、講習会などの募集時期にはハンディングなどを手伝ってもらう・・・・・・その辺りはどこも一緒じゃ。理念やコンセプトも似たようなもんじゃし」
「そう言われてしまうとそうなんですが・・・・・・」
確かにその通りだ。もっと差別化を図らないと、学生には来てもらえない。コロナ禍のためただでさえどこの業界も人手不足なのだから、学生アルバイト募集の競合は大手学習塾だけではない。その中で選んでもらうのは工夫が必要だろう。
「できるだけ直接的にアピールしたいの」
「え!? 大学に直接行って募集するってことですか? それは無理ですよ。学生課にお願いして、求人票を掲示してもらうことはできると思いますが」
「それはやるべきじゃ。しかし、もう一工夫したいところじゃ」
「まさか大学前で講師募集のハンディングをするとかですか?」
東武東上線の最寄りの駅からは1km以上離れているところにB学院大学のキャンパスがある。学生のアルバイトとなると、やはりこの大学の学生頼みになるだろう。しかし、大学生相手にハンディングというのは何か違和感がある。
「だいたい学生さんたちは、大学近くのアパートを利用しているもんじゃがの」
「なるほど。ではその周辺のアパートをターゲットにして、ポスティングを行っていきましょう。
そうすればポストに入っている
募集のビラを手にする機会ができますので、
必ず目に触れますし、
申し込みを考えてくれる学生も増えるはずです」
「効果的じゃな。その上で公式サイトの採用ページを充実させるのがいいじゃろう。どちらにせよ他と差別化できる項目は必須じゃ」
「育成に力を入れますので、
社会人としてのスキルも磨ける
という点をアピールするのはどうでしょうか?
時給はいいですし、生徒の成長に関われるというやりがいもあります。さらに社会に出てからに備えて自分も成長させられる環境ということになれば、学生のアルバイトとしては、かなり魅力的ではないでしょうか」
「それは響くはずじゃ。できれば休みたいときに休むことができるような自由な環境だとよりニーズが高まるだろうがの」
「いや、さすがにそれは厳しいです。何人も雇うわけではありませんし、複数雇っても同じ大学であれば試験時期などは一緒で、みんな同時期に休みの希望を出してきますからね。そこには触れずに、できる範囲の中で差別化できる点をアピールしていきます」