【このお話では、サラリーマンを続けていた40歳の松平はじめが、起業に挑戦し、税理士からアドバイスを受けて、成果を出すための大切な気づきをいろいろと得ていきます】
1学期最初の定期試験が終了した。今まで以上に質の高い対策を行った甲斐もあり、結果は上々。塾生たちからは嬉しい報告がたくさん寄せられている。それを聞いてふたりの学生アルバイト講師も満面の笑みで、今まで以上に自信を持って指導できるようになっていた。教室の雰囲気は一新され、退塾が出たときの暗いムードはもはやない。
揺らいでいた足下をしっかり立て直すことができ、その上で報・連・相の仕組みの精度も高まった。塾生やその保護者との信頼関係も向上でき、失敗から学び、成功に繋げることができたという実感がある。これで気持ち良く次のステージに立てるわけだ。
さて、次の一手は何だろうか?
そう考えたときに、やはりポイントは新規生の獲得である。特にこの春に進学した中学1年生は、部活などのリズムに慣れることを優先しており、まだ通う学習塾を決めかねている生徒が多い。ここをいかに斬り込んでいくのかがこの6月のテーマになるのではないだろうか。
そんなことを考えながら、今日は顧問税理士の天海さんに今回の成果について報告しようと、天海さんの事務所を訪れていた。
「雨降って地固まるとはまさにこのことじゃな。上手く態勢を立て直すことができて何よりじゃ。ふたりの学生アルバイト講師にも良い経験になったじゃろう」
「そうですね。より積極的に塾生に関わっていくようになりましたし、次回はもっと成績を上げて喜ばせてあげたいという純粋な思いが強まっているのを感じます」
「それはサービス向上の根幹じゃ。生徒や親御さんたちの満足度はさらに高まっていくことになる」
「とは言っても現状に満足ばかりもしていられませんので、次の動きに着手していこうと考えています」
「なるほど。具体的には?」
「・・・・・・ それがなかなか思い浮かばず・・・・・・ ただ、とにかく中学1年生を動かしたいなという思いはあります。動かしやすい時期でもありますので」
「顧客満足にとって、ニーズを満たすことの重要性はよくわかっておると思うがの」
「それはもちろん。ただ、定期試験も終わってしまいましたからね。現状のニーズといっても何かあるのかな?」
「ニーズといっても、目に見えるニーズと目に見えないニーズがあるぞ」
「目に見えないニーズ? どういう意味でしょうか?」
「これは顧客にとって顕在化されているか、潜在化されているかということじゃ。
本人自身もまったく
自覚できていないニーズを
潜在ニーズと呼んでおる。
自覚できていないから、
問題視していないし、
もちろん解決に動くこともない」
「自覚できていない問題点・・・・・・ そうか、中学1年生にとっては初めての定期試験で、その結果がどういう状態を示しているのか、その勉強の過程でどんな問題が起こっているのか、生徒も保護者も問題視していない可能性があるということか。では、それに気づくための機会が必要だということですね!」
「何かしらの気づきがあったようじゃの。スティーブ・ジョブズ氏はこう言っておる。
『消費者に何が欲しいかを聞いて
それを与えるだけではいけない。
製品をデザインするのは
とても難しいことだ。
多くの場合、
人は形にしてもらうまで
自分は何が欲しいのかわからないものだ』
とな」
「気づいていない問題を提示する。これは新しい取り組みですね。早速戻って準備を進めていきます」