【このお話では、サラリーマンを続けていた40歳の松平はじめが、起業に挑戦し、税理士からアドバイスを受けて、成果を出すための大切な気づきをいろいろと得ていきます】
起業し、学習塾を経営するようになって2年半が過ぎた。
起業するにあたって、これまでの塾講師としてのノウハウを最大限有効活用しても、現実は厳しいという話はよく耳にしていた。
起業して1年目の存続率は72.8%、2年目までだと60.9%、さらに3年目となると52.8%と統計的にはおよそ半分が倒産する。
果たして自分にできるのだろうかと不安に感じるときも多々あった。
だからこそとにかく3年目までは絶対に生き残ろうと必死にやってきたのだが、なんと、今回の夏期講習会からの入会が9名となり、オンライン部門を合わせて月の売上がついに100万円を突破したのだ!
年間の売上1,000万円が現実味を帯びてきた。
ここまでの成功はまったく予想できなかったので驚きが大きい。
学生アルバイト講師に支払う人件費や家賃、光熱費などの経費が月に30万円以上なので、所得自体は1,000万円にはほど遠いのだが、事業所得の重要な境目となる800万円は確実に見えてきている。
起業当時から顧問税理士の天海さんからは、事業所得が800万円を超えた場合は法人化を検討すべきなので、700万円を突破したらすぐに相談することとアドバイスを受けてきた。
起業当初はまったく遠い目標だったのであまり気にしていなかったが、ついに法人化を本気で検討するときが訪れたのだ。
まさに夢心地である。
ここから先は冬期講習会の準備や、受験に向けての最終仕上げに全力を注ぎながら、天海さんから法人化について様々なレクチャーを受ける必要があるだろう。
天海さんの事務所で直接話を聞く機会も増えてくるに違いない。
生徒が塾に来ない午前中の時間を有効に利用しながら、法人化について勉強していくことに決めた。
ということで、今回はその1回目となる。
「はじめさんはここまでよう頑張ったものじゃの」
「いろいろと危機的な状況に陥りましたが、その都度、天海さんに貴重なアドバイスをいただき、なんとか乗り越えてくることができました。天海さんのような相談できる相手がいなかったら2年目を迎えることすらできなかったと思います」
「アドバイスを受けても話を聞くだけで実行に移せない経営者もいるぞ。その点、はじめさんはできることはすべてやりきるという強い信念と行動力があった。はじめさんだからこそここまでの成果を出せたのじゃから自信を持ってよいじゃろう」
「事業所得が700万円を突破した段階で、法人化の相談をするようにとおっしゃられていましたよね?」
「確かにアドバイスしたの。700万円突破できそうな勢いなのじゃな」
「はい。800万円も十分に達成できそうです。ちなみに個人事業主から法人化するメリットって何なのでしょうか?」
「いくつかあるが、その一つは税制面の優遇じゃ。
事業所得が700万円であれば、
個人事業主だと所得の税が20%強、
住民税が10%で事業税も加えると、
税負担率は30%以上となる」
「税金をそこまで支払わなければならないのですね・・・・・・」
「しかし、
法人化すれば、
利益が800万円以下であれば
法人税の税率は15%で地方税、
事業税を入れて税負担率は25%程度じゃ」
「5%の違いは大きいですね。」
「ただし、法人化すると社会保険の加入が義務になるので、こちらの負担が増えるのも考えないといけないの」
「そうなんだ・・・・・・ 色々と考えないといけないんですね!」
「焦る必要はないぞ、その辺も含めて今後じっくり考え行こうかの」