【このお話では、サラリーマンを続けていた40歳の松平はじめが、起業に挑戦し、税理士からアドバイスを受けて、成果を出すための大切な気づきをいろいろと得ていきます】
2023年もついに師走に突入し、塾業界は繁忙期を迎える。
まずは冬期講習会。
ここで多くの一般生を獲得することで、新年度スタートの成功率を大いに高めることができる。
実際のところ、この年末年始から通塾を始めるという生徒は少ない。
冬期講習会に参加した一般生をそのまま春期講習会に誘導し、春から塾生になってもらう流れが定石だ。
だからこそ営業面において冬期講習会はとても重要であり、その成功いかんによって新年度の塾生スタート人数、しいては来年一年間の行方を左右する。
起業した当時はチラシを配りに学校前にハンディングに行ったり、子どもの多そうな地域で一件一件ポスティングしたりしていた。
それぐらいしか集客の方法がなかったからだ。
もちろんSNSや塾の広告サイトも活用したが、期待以上の成果には至らなかった。
だが前回の夏期講習会あたりから講習会募集の手ごたえを感じ始めてきている。
その理由は、塾生やその保護者による口コミによって入塾に前向きな生徒が集まってきているからだ。
やはり実際に体験した人の感想は、チラシやホームページの宣伝文句よりもはるかに説得力がある。
秋にはこのような影響力を考慮し、SNSを有効活用して、塾生や講習会参加生に勉強についてや将来について、社会、仕事、生き方など様々なジャンルの内容を発信するようになった。
そのため生徒だけでなく保護者も投稿内容に目を通す機会が多くなり、私の塾で今後どんなイベントを開催するのか、そのイベントに参加することでどんな効果があるのかなど、スムーズに伝達できるようになっている。
また、顧問税理士の天海さんのアドバイスを受けて、塾生ではない講習会参加生からの友人紹介制度も設けた。
紹介してくれた一般生と紹介された初参加生どちらにもお礼の文房具をプレゼントする。
無料の体験会も開催し、気軽に周囲に声をかけてもらえるようにもした。
過去に参加した一般生は一度講習会に参加して満足してくれている家庭ではあるものの、夏からは時間が経過しているため熱はやや冷めている。
その熱を再度思い出してもらうためにも、自ら口コミを拡散してもらうことは大きなメリットがある。
講習会などまったく参加したことのない家庭に、
体験した講習会のメリットや
講師陣の魅力などを話してもらうことで、
自分自身もその良さに改めて気づき
すぐに申し込みをするというケースが増えたのだ。
そしてあの時の感動を誰かと共有したいという気持ちがさらに強まり、口コミの拡散に勢いが出る。
天海さんのアドバイスを受けて相談し、学生アルバイト講師たちとも戦略を練って今回の冬期講習会の準備を進めてきたが、やはり口コミの効果は大きく、すでに冬期講習会目標の数値を達成できた。
受付した一般生の数はなんと45人。
塾生の39人と合わせると今回の冬期講習会は84人もの大人数での開催となる。
実際に冬期講習会が始まるのは12月下旬だけにまだ人は増えそうである。
ちなみにオンライン部門の受付は7人で、塾生の13人と合わせると20人。
実に100人を超える生徒をこの冬担当することになった。
冬期講習会の売上だけで260万円を突破する。
天海さんにその旨を伝えると、
「それははじめさんがここまで真摯に生徒と保護者に向き合い、熱心に指導してきた証じゃろう。創志学園の創立者であり、日本を代表する教育者の大橋博氏の言葉にはこのようなものがある。
『努力したら評価は後からついてくるものだ。
でも、最初からお金を追いかけたら
お金は逃げていく。
だから、まず努力することが大事なんだ』
とな」