【このお話では、サラリーマンを続けていた40歳の松平はじめが、起業に挑戦し、税理士からアドバイスを受けて、成果を出すための大切な気づきをいろいろと得ていきます】
2023年も残り2週間あまり。
師走の言葉どおりに多忙さはさらに際だってきた。
例年の数をはるかに上回る講習会参加人数がすべての業務に重くのしかかっている。
新人の井伊がフル回転してくれるということで成果も期待できるようになってきたのだが、オンライン部門の一般生受付が18人となり、塾生と合計するとオンライン生は31人、とても対応できなくなっていた。
なにせオンラインのレッスンは完全に1対1になるので、その分だけ講師が必要になる。
オンライン部門担当の石川は、通常の個別レッスンもほぼフル稼働状態でまったく動きがとれない。
経営者である私でさえわずかな余裕もないという危機的状態だ。
これで誰かが病欠するとレッスンに穴が空くのは避けられない。
私は早速、顧問税理士の天海さんに相談した。
「この状態になる前にオンライン生受け付けは定員とすべきだったのですが、どうするか悩んでいるうちにここ1週間であっという間に倍になりまして・・・・・・」
「人手不足がさらに深刻になったというわけじゃな。さすがにこの状態はまずいの。サービスの質が低下すると、その悪評はただちに広がる。ようやくここまでの大所帯になったのにそれが仇となって新年度の塾生スタート人数に悪影響を与えてしまっては本末転倒じゃからな」
「オンラインの申し込み生は、この冬休みだけのスポットレッスンを希望しているケースが多いです。1人当たりのレッスン回数が少ないので時間の都合はかなりつくのですが、対応できる講師の数に限界があります。ここは何人か断った方がいいのでしょうか?」
「それは回避したい最悪の選択肢じゃな。一度受けた以上は、あちらのスケジュールを考慮すると断るのはまずかろう」
「石川や酒井に相談すると、自宅からのリモートワークであれば働けるという学生が数名いるそうです。以前からそういった話もあったのですが、目の届かないところでのレッスンは心配ありということでやめていました」
「スポットレッスンで困った科目や単元について質問したいのであれば、それでも十分対応できるのではないか。しっかりとルールを徹底し、信頼できる学生さんに任せられるのであれば問題ないと思うがの」
「なるほど、オンライン生でも受験を控えた塾生についてはこれまで対応していた講師にお願いし、スポットレッスン希望の一般生はリモートワークの学生アルバイト講師にお願いできたらかなり余裕を持って対応できます」
「日新食品(株)の創業者である安藤百福氏の言葉に、
『少しでもよい方向が見つかれば、
即変更したらよろしい。
朝令暮改は恥ではない。
柔軟さの証明である』
というものがある。
信念を貫くことは大切じゃが、
これまでのやり方に固執せず、
状況に対応して
新しい仕組みを設けることもまた必要。
経営者には柔軟な思考が不可欠なのじゃよ」
「そうですね、希望者には以前に家庭教師や塾講師のアルバイトの経験がある人が多いようなので、リモートワークでの質問受けはできるという学生の目星はつきますし、石川や酒井と手分けして研修すれば、そこまで研修にも時間はかからないはずです」
「付け焼き刃にはなってしまうから、この辺りの仕組みの確立は今後の課題にもなるの」
「そうですね。まずはすぐに面談をオンラインで行い、人柄や指導力、インターネットの環境などを確認してこの冬期講習会からお願いしていきます。そうなるとオンライン講師も増えて、対応できる生徒の数も飛躍的に伸びますね!」