【このお話では、サラリーマンを続けていた40歳の松平はじめが、起業に挑戦し、税理士からアドバイスを受けて、成果を出すための大切な気づきをいろいろと得ていきます】
2023年もいよいよ残り数日。
新人講師の井伊を迎えたことと、オンライン部門の担当をリモートワークに切り替えていくことで人手不足を解消し冬期講習会は無事にスタートをきることができた。
ただし、リモートワークとして雇用した学生アルバイト講師8人については連日しっかりと報告を受けて指導を行い、自分勝手な対応にならないように注意を怠ってはいない。
井伊の報告を直接聞いているのは古参の酒井であり、オンライン部門の講師の報告を聞いているのは石川だ。
私はこの酒井と石川から状況を聞く仕組みになっているので負担はかなり軽減することができた。
酒井と石川が成長し、若手や新人の育成を任せられるほどの経験を積んでくれなければ今回のような冬期講習会の成功は望めなかっただろう。
今思うとこのような逸材が加わってくれたことは本当に幸運だった。
今日は夜にわずかな時間を作り顧問税理士の天海さんとのささやかな忘年会だ。
思えば起業し、私の学習塾がここまでの規模になることができたのも天海さんと縁があったからこそ。
私は天海さんと酒を飲み交わしながら、つくづく人に恵まれていることを思った。
自分だけの力ではいくら休みなく働き続けてもここまで到達できなかったのは間違いない。
「はじめさんにとっての2023年は、これまでせっせと種を蒔いてきたことが報われた収穫のときじゃったの」
「個人事業主から法人化の手続きも順調に進めることができ、昨年の今の時期では想像もつかないほど大きくなりました。これも天海さんから常々アドバイスをいただけているからです。ありがとうございます!」
「いやいや、わしの助言などたかがしれとるよ。それよりもはじめさんがコツコツとここまでたゆまぬ努力を継続できたことが成功の秘訣じゃろう」
「私は自分にできることをやり切ろうと取り組んできただけです。ここまでの成果に至ったのは人との出会いによるものです」
「うむ。学生アルバイト講師の二人の成長は大きかったの。今後さらに発展していくためには、あの二人にはさらに頑張ってもらわなければならぬ」
「こちらの期待以上の活躍ぶりですよ。もはや私の組織には欠かせない柱ですね。新人の井伊もオンライン部門講師も二人のフォローのおかげで順調に育っていますので、そういった指導力も高く評価しています。冬のボーナスも今まで以上に奮発できますので、ここまでの実績を褒め称えつつ渡そうと思っていたところなんですよ」
「これまでの頑張りに報いることは二人のモチベーションアップにも繋がるじゃろうな。しかし、オーストリアの心理学者で、心理学の権威であるフロイト氏やユング氏と並ぶ
アレフレッド・アドラー氏の言葉には、
『うまくできたという褒め言葉ではなく、
ありがとう、助かったと
感謝の気持ちを伝えると、
感謝の喜びを体験し
人は自発的に貢献を繰り返します』
とある」
「褒める言葉よりも感謝の気持ちを伝えた方が相手には響くということですね。確かに私にも経験があります。以前に講師を務めていた進学塾で成果を上げていた教室長は、スタッフに対して常々感謝の気持ちを素直に伝えていました。私もそれを聞いてさらにやる気になったものです」
「感謝の気持ちを伝え合うことで
人との絆はさらに強くなる。
これから先も二人には頑張ってもらい、いずれは正社員として教室長になり活躍してもらわなければの」