【このお話では、サラリーマンを続けていた40歳の松平はじめが、起業に挑戦し、税理士からアドバイスを受けて、成果を出すための大切な気づきをいろいろと得ていきます】
2024年スタート。
大晦日から元旦へ、冬期講習会自体は休みの期間ではあるものの、今回から正月特訓という受験生対象のイベントを開催しているので息つく暇も無い。
12月に入ってからここまで怒濤のごとく進んできたことや、ここから先3月まではさらに多忙になることを考慮し、学生アルバイト講師は全員休日とした。
酒井や石川の力も借りたい気持ちはあったが、さすがに彼女たちへの負担が大きすぎるためお願いはしなかった。
今回の正月特訓はお試しのような感じなので、自習室を開放し、好きな時間に勉強できる環境を作ったことと、私が常時待機しているので質問も自由にできるというだけである。
なので、正月特訓という名称は名ばかりで特別な費用はかからない。
今回の状況を鑑みて来年は本格的な受験対策レッスンの期間を作りたいと考えている。
しかし1月1日、2日と自習室の利用者は片手で数えられるほど。
ほとんどの時間は無人の教室。
生徒たちも冬期講習会とその後の自習室利用でかなり疲れもたまっているだろうし、家族で過ごす大切な時間でもあるのでこの状況は当然なのだろう。
大手の進学塾であればホテルを借りて3日間の合宿を行い、講師も生徒も頭に鉢巻きを巻いて10時間以上猛勉強しているのだが、私の学習塾で同じ事をやるためにはいくつものハードルがありそうだ。
ただし中学受験を控えたオンライン部門の小学6年生になると話が異なる。
12月31日だろうが、1月1日だろうがまったく関係なくレッスンを希望している。
なにせ1月受験となるともう1週間くらいしか時間がないのだ。
関西の難関校を受験する生徒は1月が本命になり、中には1月13日から16日まで午前・午後の合計8校受験予定している生徒もいた。
教室の自習室時間に被らないようにスケジュールを組んだのだが、予想以上にニーズがあった。
来年の正月特訓はまずオンライン部門の生徒優先で企画していく必要があるだろう。
昼は自習室もオンラインレッスンも休憩時間を設けていたので、あらかじめ顧問税理士の天海さんに伝えておき、新年の挨拶をさせていただいた。
「新年明けましておめでとうございます! 直接お会いしてご挨拶したかったのですが、すみませんお電話で」
「いやいや、はじめさんの方こそ元旦から生徒のためにお疲れさまじゃの。どうじゃ、正月特訓を開催してみての感想は」
「教室に通っている生徒にはあまり必要がなかったようで、顔を出して帰る生徒が数名です。オンライン部門は逆に盛況で、私一人では対応できないのでお休みにしてもらった生徒が出たほどですね」
「正月三が日から仕事が忙しいとは嬉しい悲鳴じゃの。しかし働き過ぎて身体を壊さぬようには気をつけた方がよいぞ」
「はい。ゆっくり身体を休める時間はしっかり確保する予定です。ただ、こうなると大晦日も正月も実感がまったくないですね。気がついたら年を越していたという感じですよ。この業界で働く宿命ではありますが、少し味気ないです」
「年度末ではないからの。だからといって漠然と過ごしてしまうのももったいない。
一年の計は元旦にありとも言うからの、
気持ち新たに目標を設定してみる機会に
してみてはどうじゃ」
「目標ですか、そうですね、強烈な熱意がたちこめる中で正月特訓ができるような塾になれるといいなと先ほど考えていましたが、この歳になって見る夢にしては少々でかすぎますね」
「新しい夢を見るのに歳は関係ないぞ。ナルニア国ものがたりの作者であるC・S・ルイス氏の言葉には
『新しい目標を設定したり、
夢を見るのに
歳を取り過ぎている
ということは決してない』
とある。はじめさんの夢はわしの夢でもあるからの。共に歳を忘れて新しい夢を見ようとするかの」