遅々として進行しない台風10号に居座られて大雨が長く続いたが、それもようやく終りを告げた。
暑さの残る2024年9月はまだ始まったばかり。
夏期講習会から入会した一般生は粘りに粘ってようやく3名。
人数は少ないが、素直にアドバイスを受け止め、努力を継続できる才能の持ち主ばかりなので、磨けば光る確証があるし、これまで在籍している塾生にも良い刺激を与えてくれると期待している。
通常であれば入会数3名と、塾生数の微増にがっかりするところ。
しかし、実はオンライン部門では実情が大きく違った。
全国各地から夏期特訓レッスンに参加してくれた一般生11名のうち、塾生として2学期以降もレッスンを受けることになったのが、なんと10名もいたのだ(入会金無料の他、維持費や教材費もすべて無料、コマ数も個々に差があるため、通塾してくれる塾生とは売上はかなり異なるが)。
大いに活躍してくれたのがオンライン部門の責任者である石川、さらに特別チームのメンバーを加えた大久保と春日の3名だ。
オンライン生はこれで37名となり、通塾生とほぼ変わらない人数となったのである。
これはかなり嬉しい誤算だった。
やはりオンライン部門は市場規模が大きく、客層も様々なので伸びしろが大きい。
さらに嬉しい誤算は、オンライン講師として働きたいという応募が増加していることだ。
この春の中高一貫校の合格実績によって知名度が増したことが大きな要因だろう。
コロナウィルスの脅威が落ち着いたことで労働環境がリモートワークから以前の働き方にチェンジしてきており、そのままリモートワークで働きたいという希望者が市場に溢れていることも影響しているのではないだろうか。
オンライン講師は日本中どころか、
世界中から募ることが可能なので、人材の宝庫だ。
学歴もさることながら、講師としての実績も豊富であったり、英検1級取得など優秀な資格を保有している人材がゴロゴロしている。
応募してくれたどの方にもレッスンをお願いしたいぐらいなのだが、人件費との兼ね合いでそれは不可能だ。
今後の増加も見越して追加で3名のオンライン講師を雇用することにした。
問題はあまりに優秀な人材ばかりで何を基準に選ぶべきなのか困るという点だった。
私は顧問税理士の天海さんにオンライン部門の盛り上がりを伝えるため事務所を訪れた。
「ほうほう、11名中10名の入会とは素晴しい成果じゃの。いずれは通塾する塾生数を追い抜くのではないか」
「ええ、もしかするとこの冬にでもそれが現実になりそうです。そのためにもオンライン講師はもう少し増やしておいてもいいかなと思いまして」
「以前も増やたはずじゃが?」
「そうなんですが、やはり直接会うこともないので、どうしても関係性が希薄になってしまうといいますか、・・・・・・自然消滅的にいなくなってしまう講師もいたりしてなかなか定着していなんです」
「それがリモートワークのデメリットのひとつなのじゃろうな」
「私と石川、大久保、春日がメインで、井伊が少しというのが定番になりつつあります。ですから担当するコマが少ないので辞めていく講師もいますね。辞めますと突然告げられて、そうですかこれまでありがとうございました、で、終了ですからね。あっさりとしたものですよ」
「信頼できるオンライン講師を増やしたいということじゃな」
「そうなのですが、学歴や実績が優秀な方が多すぎで逆に選ぶのが難しくなってきまして」
「今年から新1万円札の顔となった渋沢栄一氏の言葉に、
『人を選ぶとき、
家族を大切にしている人は間違いなし。
仁者に敵なし。
私は人を使うときには、
知恵の多い人より人情に厚い人を選んで採用している』
というものがある。関係性がどうしても薄くなってしまうリモートワークの人事には重要な要素になるのではないかの」