10月に学校で実施された2学期中間テストの成果をより多くの人に伝えるべく、私は顧問税理士の天海さんのアドバイスを受けて「YouTubeチャンネル」を開設した。
YouTubeチャンネルというと、ずいぶん大がかりなことを始めたなと思われるかもしれないが、そんなに手の込んだ動画をアップしたわけではない。
学生アルバイト講師の榊原がこの方面に詳しいということで全面的に協力してもらいながらなんとか形になった素人丸出しのYouTubeチャンネルだ。
編集した動画もまだひとつだけ。
塾長である私が登場し、夏期講習会から入塾したばかりの生徒がどれだけの成果をあげたのか紹介したもの。
もちろんそのために塾生自身がどんな準備をして、どう努力してきたのか、講師陣がどうかかわってきたのかも話をしている。
ターゲットは学力中間層ということで、苦手科目も克服して5科目で合計100点以上伸びた点をアピール。
生徒の喜びの声も顔や名前を出さずに紹介。
こうしてかなりインパクトのある動画ができあがった。
しかし何か物足りない。
そこで石川や酒井といった学生アルバイト講師に完成した動画を見てもらい、率直な感想を聞いてみた。
そうすると一番若手の井伊が、この時とばかりにどんどん辛辣な意見を言ってくる。
「全体的に硬い」、「自慢気な内容が鼻につく」、「面白みがない」というもので、他のメンバーも否定はしないところをみると同じような感想らしい。
天海さんにも見てもらったのだが、やはり苦笑いを浮かべていた。
「どのあたりを工夫するともっと魅力的な動画になるのでしょうか。何せ初めてなもので、コツがよくわからないんです」
「まずは、はじめさん自身がもっと笑顔で登場し、話を進めていくべきじゃろう。表情が固いので、全体の雰囲気も硬い感じになっておる」
「笑顔ですか・・・・・・ 確かにその視点を忘れていました。伝えたいことをしっかり話すことばかりを考えていましたからね」
「アメリカで活動した牧師で、ポジティブシンキングを提唱したジョセフ・マーフィー氏の言葉に、
『笑顔には、人の心を明るくし、
柔和で好意的にさせてくれる
偉大な力があります』
とある。笑顔は人を惹きつける最も重要な要素じゃ。作り笑いは逆効果じゃがな」
「どうも意識すると笑顔が引きつってしまって・・・・・・」
「はじめさんの塾には魅力的な講師がたくさんいるじゃろう。以前に参観させてもらったときに、彼女たちの笑顔は素晴しいなと感心したものじゃよ。もっとたくさん登場してもらったらどうじゃ」
「そうですね! 彼女たちなら自然な笑顔で撮影できますね。塾紹介の動画は講師の魅力をもっとたくさん伝えていく絶好の機会ですから、この際、全員に登場してもらった方がいいか・・・・・・」
「YouTubeチャンネルは好きなように構成できるのだから、思い切ってそれぞれの講師の紹介コーナーを作成してみてはどうじゃ?
笑顔だけではなく、
その講師がこんな指導をしている
という光景を具体的に見せたら、
講師に興味を持つだけでなく
自分が通っているイメージもしやすいじゃろう」
「なるほど、実際に彼女たちにレッスンをしてもらって、とてもわかりやすい説明だったり、親身に対応してくれるという点を伝えるわけですね。
笑顔効果だけじゃなく、
サービスの内容を知って
この講師のレッスンを受けてみたい
と思うかもしれませんねく
」
「YouTubeで検索して見てくれる全国のユーザーもいるじゃろうから、オンライン部門のニーズも増える。広い市場に対応できるツールになるじゃろう」
「講習会の募集活動や入塾活動にもかなり大きな影響をもたらしてくれそうですね! これはもっと力を入れて作成した方がいいと感じました」