朝起きるとやけに身体がだるい。
以前から感じることはあったが、ここ最近、特に今回の夏期講習会中から無視できない違和感がある。
ただでさえ貴重な戦力である石川がいない状態で、塾長である私まで戦線離脱などできない。
あえて考えないようにしてダマシだましやってきたが、夏期講習会が無事に終了して緊張の糸が切れたことと、親友が急逝したことで蓄積してきた疲労が一気に表面化した。
頭痛が止まない。
少し階段を上り下りしただけで息があがる。
全身を覆うようなけだるい感じ。
さらにショックなのは、鏡に映った自分自身の身体だ。
夏期講習会中は自分の姿などゆっくり確認している暇さえなかったのだが、改めて見てみると驚いた!
下腹がぽっこり膨らんで、一目でメタボが進行しているのがわかった。
夏期講習会の激務で過剰なエネルギー消費をしているはずなのに、痩せるどころか太っている。
若い頃は夏期講習会が終了すると2kgから3kgは体重が落ちていた。
この歳になると無理が利かなくなっているということなのだろうか?
起業当初から、顧問税理士の天海さんから健康の重要性についてよく話を聞いていたので、一時期は意識していたのだが、ここ最近は完全にノーマークになっていたようだ。
うまく習慣化できていたのにいろいろあって油断していた(言い訳に過ぎないのは十分わかっているが・・・・・・ )
2学期に入り、やや時間に余裕ができたので、今日は久しぶりに天海さんと昼食。
場所は定食屋さんだ。
当初はハンバーガーが食べたかったのでファーストフードに決めていたのだが、健康面の話を電話ですると食事の場所をすぐに変えられた。
「確かにはじめさん、ちょっと体型が変わっているかもしれんな。スーツを着ていても内臓脂肪が目立っておるぞ」
「やっぱり目立ってますか! おかしいなー、夏期講習会中は食事をする時間もなくて軽食ばかりで、摂取カロリーより消費カロリーの方が多かったはずなんですが」
「カロリーはあくまでもエネルギー量じゃからな。
マイナスカロリーだとしても、
メタボ予防にはそこからさらに
エネルギー産生栄養素のバランスが重要になる。
タンパク質(Protein)、
炭水化物(Carbohydrate)、
脂質(Fat)のPFCバランスじゃ。
夏期講習会中は主に何を食べておった? きっと栄養素が偏っていたのじゃろう」
「まあ、菓子パンとかドーナツとかが多かったですかね、あとはカフェオレとか、熱中症対策にスポーツドリンクとか・・・・・・ 」
「糖質過多じゃな。ファーストフードの揚物も多かったのじゃないか? 」
「そうですね、なにせ教室のすぐそばにお店があるので、2日に一度は食べてました」
「それで今日も食べようとしとったのか!? 呆れたものだ。脂質が多く含まれている代表的な食べ物じゃ。それはいくら働いてもメタボへの道を突き進んでおるわい」
「親友の話を聞いて、高血圧や高血糖による心臓病や脳卒中には気をつけなければならないなと感じていたところです」
「マイナスカロリーだけに注意するのではなく、バランスの整った食事を実践していくことで内臓脂肪は減らすことができる。
1日に摂取してよい炭水化物や脂質の量を
あらかじめ決めておくことじゃな。
数学の講師であればわけない話じゃろう」
「面倒くさくてそこまでしっかり見ていませんでした」
「後悔は先に立たずじゃぞ。今すぐ見つめ直しなさい。アメリカの臨床心理学者アン・ウィルソン・シェーフ氏の言葉には、
『健康は私たちが買えるものではない。
しかし、とても価値のある預金口座になり得る』
とあるぞ。経営者たる者、健康への投資は惜しまぬことじゃ」