コラム



税理士がサポート!『はじめて起業ものがたり』  「起業って何から始めればいいのか 257 従業員のモチベーションアップの仕組み」

 

今回のポイント
 利益の分配 

 

 

私立高校無償化(所得制限の撤廃)によって私立の中高一貫校へのニーズが高まること、全国区のオンライン家庭教師Mの突然の破産申請、ここがビジネスチャンスだと考えると、オンライン部門の強化が必須だ。

 

オンライン部門の責任者であった石川は退職してしまったので戦力ダウンしているのは間違いない。

生徒や家庭も信頼している石川がいなくなったことで動揺し、オンライン部門講師陣も同じような狼狽した。

その影響もあって中高一貫校への合格者を増やすために2年がかりで取り組んできたプロジェクトは頓挫し、今年は大々的にアピールできるような成果は残せなかったのだ。

オンライン部門全体が失速している状態である。

 

オンライン家庭教師Mに在籍していた生徒が他に流れているはずだが、私の学習塾への申込や問い合わせはまったくない。

業界への不信感が高まっている中、より小さな規模の企業を顧客が選択するというのはやはり難しいのか。

 

私はオンライン部門のてこ入れのために、中途採用として正社員になった伊達の考えを聞くことにした。

 

 

伊達は冬期講習会直前からの採用だったが、周囲が驚くような成果をあげている。

なにかしらの大きなヒントを得られるかもしれないという期待感があった。

 

伊達が注目したのは、オンライン部門講師への報酬額についてである。

伊達のことだから、教育方針や価値観の共有・徹底など基本的な部分にまず目を向けるのかと思っていたので、完全に不意を突かれた。

 

現状としてオンライン部門講師は「外部への業務委託」としての扱いで、報酬額は単価の70%となっている。

つまり30%が学習塾側の取り分となる。

50分3,000円の講師であれば、1コマ働けば2,100円の報酬(さらにここから源泉徴収分は引かれる)、学習塾側は900円の収入。

 

なにせオンライン部門は、講師が自宅からTV会議システムを使って直接生徒にレッスンを行う。

こちらとしては電気代もかからなければ、交通費も支払う必要がない。

教材も自由で、プリントなどを印刷する手間もなければコストもかからない。

収入から引かれるのは広告費ぐらいだ。

だから人件費の割合がここまで大きくなる。

 

教室まで来てレッスンしてくれている本多や榊原の方が、オンライン講師よりも時給は低い。

 

ただし、オンライン部門講師のシフトがしっかり稼働しているのかというと、決してそうではなく、担当講師がまったくいない講師も多くいた。

そうなると在籍しているだけで当然報酬はゼロ。

オンライン部門の生徒が多いわけではなく、人気講師に集中しているので稼働率は高くない。

対応策としては、単価を低く設定したり、無料体験を実施して集客する方法もあるのだが、それはあくまで外部委託しているオンライン講師自身の判断に任せざるをえない。

 

 

 

伊達が指摘したのは、

 

この報酬の仕組みが、オンライン部門講師の

 

モチベーションを下げているという点であった。

 

なにせ無料体験を実施しても入塾しなければ報酬はゼロ。

簡単に単価を上げると、物価高で困っている家庭が多い中なので生徒は単価の安い講師に逃げてしまう。

結果として力のある講師は他塾へと移ってしまうのだ。

 

伊達の進言は「月に一定のコマ以上レッスンを行うと講師にボーナス」、「ポイント購入制にして多くのポイントを一括購入することで家庭にボーナス」という2点である。

家庭にボーナスポイントがつけば、有料のコマでも無料体験と同じ感覚で受講できるし、レッスンを行っているので講師側に報酬も支払われる。

コマ数を増やすためにより多くの集客を求めて無料体験を実施する講師も増えるだろう。

 

状況に見合った利益分配の再構築で

 

講師のモチベーションは高まる。

 

顧問税理士の天海さんが以前話していた幕末の実業家である岩崎弥太郎氏の

 

部下を優遇し、

 

事業の利益はなるべく多く彼らに分け与えよ

 

という言葉を私は思い出していた。

 

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