【このお話では、サラリーマンを続けていた40歳の松平はじめが、起業に挑戦し、税理士からアドバイスを受けて、成果を出すための大切な気づきをいろいろと得ていきます】
新年度スタートの目標を達成できなかったことに私が大きなショックを受けていることを心配してくれたのだろう。
顧問税理士の天海さんが、たまには休んでゴルフでも一緒にしようと提案してくれた。
天海さんに対しては、猫と日向ぼっこをしながらのんびりとお茶を飲んでいるイメージしかなかったので、スポーツをしようという誘いに驚いた。
いつもお世話になっている天海さんの誘いを断れるはずもなく、早朝から起きて体操をし、準備万端でゴルフ場に向かった。
天候はあいにくの曇り空。
昨日は一日中雨が降っていたので、ゴルフ場もかなりぬかるんでいる。
「自然と向き合ってプレイするのもゴルフの醍醐味じゃからな」
天海さんはそう言いながら、ゆったりとしたスイングで上手く打っている。
「ナイスショットですね! 天海さんがゴルフも上手だとは知りませんでした」
「これでも若い頃はシングルプレイヤーじゃったんだぞ」
ゴルフをするというより、天海さんとカートに乗って気ままにお喋りするのがとてもいい気分転換だった。
実際のゴルフの方はというと、気持ちがブレブレだからなのか、それとも久しぶりの運動で鈍ってしまっているのか、私のショットはミスばかり・・・・・・
「はじめさん、そのボールは泥にめり込んでいるから、ピックアップしてワンクラブレングス以内に置いていいルールじゃぞ。そのまま打つのか?」
打ちにくくはあるが、決して打てない状態でもないので、そのままでも大丈夫だと判断した私は、天海さんのアドバイスを聞かずに2打目を打った。
ややダフり気味で、しかも引っかけて打ってしまい、ボールは林の中へ。
最悪のOB。
やはり天海さんのアドバイス通り、丁寧に臨むべきだった。
気持ちが焦ってルーティンも中途半端になり、集中できずにスイングしたこともこの悪い結果を生んだのだろう。
ここまでのスコアは、ミスショットやミスパットがあっても、なんだかんだでまずまずだっただけに、このOBは痛い。
うなだれていると、天海さんがまた話しかけてきた。
「誰にでもミスはつきものじゃ。そういうときは気持ちを切り替えて次に進むことが大切。はじめさんは失敗を反省し、次に繋げようとする心がけはいつも立派じゃが、気持ちの切り替えは下手じゃな」
「失敗や後悔を引きずる癖はありますね。考えないようにしても、どうしてもすぐに思い出してしまうんです」
「失敗を忘れて、同じことを繰り返すよりかは遙かにマシじゃが、リーダーがウジウジしていると全体の士気にかかわるぞ」
「そうですね。頭ではわかっているのですが、自然とこうなってしまうので、どうしていいのか困っています」
「アメリカで社会福祉活動などに大きく貢献したヘレン・ケラー氏はこう言っておる。
『元気を出しなさい。
今日の失敗ではなく、
明日訪れるかもしれない
成功について考えるのです』
とな」
「失敗を思い出さないようにするのではなく、これから起こるかもしれない成功について考えれば、前向きな気持ちに切り替えられますね! 当たり前なことなのにそれができていませんでした」
「今日のプレイも仕事のことで頭がいっぱいになって、それを引きずったスイングになっておるぞ。それではせっかくリフレッシュできる機会も水の泡。頭の中はいつまでたっても休まらぬ。
気分転換するには
一度失敗を忘れて、
頭の中をスッキリさせることが大切じゃ」
「わかりました。気分転換の練習も兼ねて、今はショットの成功についてだけ考えてプレイしてみます!」