【このお話では、サラリーマンを続けていた40歳の松平はじめが、起業に挑戦し、税理士からアドバイスを受けて、成果を出すための大切な気づきをいろいろと得ていきます】
天海さんのアドバイスを受けた後、私は自宅に戻り、改めて創業計画書の記入にじっくりと取り組むことにした。
大学の卒論作成のようにビッシリと書いていくのかと思っていたが、創業計画書は意外に記載するスペースが狭く、書く量的にはまったく負担を感じないくらいだ。これなら履歴書を書く方が量は多いかもしれない。
私が記載する項目は大きく分けて3つ。
1 創業の動機
(どのような目的・動機なのか)
2 経営者の略歴等
(担当業務や役職、身につけた技能も記載)
3 取引商品・サービス
記載するスペースが狭いからこそ、説得力のある内容を簡潔にまとめる必要がある。ただ、それぞれの項目のポイントを付け加えた見本を天海さんから受け取っていたので、とてもイメージがしやすかった。
「やっぱり自分ひとりで進めていくのと、プロからアドバイスを受けるのでは、効率も質も変わってくるな。税理士の天海さんに相談したのは正解だった!」
私は進んできた方向が間違っていないことを再認識し、記載する内容の検討に入った。
「創業の動機には、
物件の情報も入れた方がいいのか。
この場所にこんなお手軽な物件を見つけたということをアピールするのは、確かに今後の経営の見通しの好材料だもんな」
これは物件をどこにするのか早く決めてしまった方がよさそうだ。絞り込んでいたマンションタイプを今週中にも見学して回り決定しよう。場所はほぼ一緒だから後は家賃の交渉だ。
「経営者の略歴等では特に問題はなさそうだな。
以前の勤務先の月給や退職金も
記載しておいた方がいいのか」
天海さんからの見本がないと、そんなことまで記載するとは思いもつかないでスルーしていたはずだ。
「そうなると後は、取引商品・サービスの欄か・・・・・・ 問題はやはりここだな」
取引商品・サービスはさらに4つの項目に分かれている
① 取引商品・サービスの内容(売上シェア率まで記入)
② セールスポイント(他塾のサービスとの差別化をアピール)
③ 販売ターゲット・販売戦略(具体的にどうやって生徒を集めるのか)
④ 競合・市場など企業を取り巻く状況(地域にどのくらいの生徒がいるのか)
単価を上げるためにも、大手学習塾との差別化を図るうえでも、やはり個別指導の形態がベストだろう。1回90分の授業を週3回、自分に合った時間を選んで受けられるようにすれば、主要5科目の対応も可能だし、月謝25,000円でも決して高くはない。
立地環境からすると学区から考えて対象となる中学校は2つ。小学校は4つほど。この地域の教育熱は高く、学区外の中高一貫の私立受験を検討している家庭も多い。中学校の定期試験対策をしながら、メインは小学生の私立受験になるだろう。そのノウハウは充分ある。
販売戦略としては、地域のチラシ折り込み、朝の学校周辺で行うハンディングや地域の住宅に広告を配達して回るポスティングが挙げられる。あとはインターネットの利用だ。学習塾掲載サイトへの登録、ホームページを作成しコンテンツを充実させることで、宣伝効果や呼び込み効果を期待できる。
「この創業計画書を記載していくと、
起業のイメージがどんどん固まっていくな。
これだったらスタートで20人くらい集められるんじゃないか?」
25,000円×20=500,000円だと、天海さんの言っていた月の売上50万円に到達できる。
こうして、私の中でこの数字が実現可能なものに思えてきた。