コラム



税理士がサポート!『はじめて起業ものがたり』  「起業って何から始めればいいのか 114 新人の育成によって従業員の成長を促す」

 

今回のポイント
 教えることで自らも学ぶ 

 

【このお話では、サラリーマンを続けていた40歳の松平はじめが、起業に挑戦し、税理士からアドバイスを受けて、成果を出すための大切な気づきをいろいろと得ていきます】

 

 

塾生数は4月スタートよりも挽回してきているのだが、人手不足が深刻化してきた。

もはやシフトに入っているのは石川と酒井の2人と言っても過言ではない。

しかも石川はオンライン部門を担当しているため、来塾する生徒への直接のレッスンは酒井が担当する機会が増えた。

 

 

どちらも同期の女性の学生アルバイト講師なのだが、酒井はやや不器用な面があり、不用意な発言で生徒を傷つけてしまったり、やる気を削いでしまうことがあり、心配な状況である。

 

そんな中で、この春に大学生となった1年生の学生アルバイト申し込みが2件あった。

1人は本多という男性で、もう1人は榊原という女性。

どちらも講師経験はない初心者。

 

私自身もオンラインのレッスン、直接の個別レッスン、石川・酒井の報告受けや家庭とのコミュニケーションなど多忙で、研修に割く時間がほとんど取れない状態だ。

できれば生徒からの信頼も抜群で、実績豊富の石川に新人研修をお願いしたいのだが、石川に任せている業務もパンパンで、これ以上に負担をかけさせるわけにはいかない。

 

教室の外壁塗装の件で顧問税理士の天海さんに電話している際に、ちょうどその話題にもなった。

 

「石川さんと酒井さんには、はじめさんが熱心に研修しておったじゃないか。研修時に何を伝えればいいのかは、酒井さんも承知しておるのではないのかの」

 

「そうですね、酒井は几帳面なところがあって、研修の内容もしっかりメモをしていたので、それを振り返れば研修を担当することは可能ですね。ただ、心配なのは、生徒対応で荒っぽいところが新人2人に悪影響を及ぼすのではないかという点です」

 

「先日の打ち上げに参加させてもらった際に少し話をさせてもらったが、そんなにひどい罵詈雑言を浴びせるような子には見えなかったぞ」

 

「ええ、もちろん生徒やご家庭の悪口を言うわけではありませんよ。ただ表現がダイレクトなので、そこが生徒受けの厳しい理由だと思います。例えば、宿題をやり忘れた生徒にやる気が無いなら勉強なんてやめてしまいなさい、といったニュアンスの指摘をスバスバしていくんです。石川はその点が上手で、オブラートに包んでアドバイスしながら目標に誘導することができます。ですから生徒も納得した後に行動に移せるんです」

 

 

「はじめさんは酒井さんからの報告受けの際にその点について話はしておらのか?」

 

「叱るときにズバッと叱れるところなどは酒井の長所でもあるので、完全否定はしていません。報告時にも、生徒との良好な信頼関係を築けるよう気づきを与えるような傾聴をしているのですが、気づいているのかいないのか、なかなか実際の酒井の行動に反映されていません。彼女はかなり頭が固いんですよね」

 

「では尚更、今回の新人研修を酒井さんに託すべきじゃの。もちろん定期的にはじめさんも研修に絡んでの話じゃが」

 

「酒井に新人の研修を任せると? それはどうしてでしょうか?」

 

「儒家の経典である礼記にはこのような一説がある。

 

教うるは学ぶの半ばなり 』。

 

他人に教えることは、

 

自分も学ぶことが多く、

 

成長できるという話じゃ 」

 

「確かに酒井が私の研修時のメモを振り返って研修していけば、彼女自身に新しい気づきが生まれるかもしれませんね。特に新人の本多という学生は体育会系の雰囲気でしたから、その言動を酒井が指摘することで、彼女自身の生徒対応も変わるかもしれません。プラスに働くことを期待して新人研修は酒井中心に進めていくことにします」

 

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