【このお話では、サラリーマンを続けていた40歳の松平はじめが、起業に挑戦し、税理士からアドバイスを受けて、成果を出すための大切な気づきをいろいろと得ていきます】
8月もあっという間に中盤をむかえ、夏期講習会も終盤戦に突入した。
これまでの夏期講習会と大きく異なる点は、連日のように続く猛暑だけではなく、講習会に参加してくれる生徒の数とそれに対応する講師の数だ。
普段であれば、休憩時間などの時間を有効活用して、一般生と個別面談を行い2学期からの入会を勧める。
講習会前から入会の妨げになる要素を確認しておき(そのほとんどは部活が忙しい、または、まだ入会は早い気がするといったもの)、それを夏期講習会に崩していくのがセオリーだ。
時には一人の生徒に日にちを分けて別の講師が入会プッシュをかけることもある。
さらに家庭へも現状の学力の状況や、今後の学習方法について伝えて生徒も保護者も入会する気持ちに向けさせるのが、講習会の重要な仕事の一つなのだ。
しかし、今回は人手不足で全体のサービスが低下する危険性があるため、その入会促進面談を中止した。
どの講師もレッスンに全力を注ぎ、自習室の管理や質問対応に集中できる環境を整えた。
結果がどうなるのかはまだわからないが、驚くような反応も見られた。
オンラインレッスンで都内の中高一貫校を目指しているかなり学力の高い生徒なのだが、夏期講習会中のコマが増えたのだ。
当初は週3回が目安だったが、生徒自身の希望で毎日レッスンを受けたいとなり、いつのまにか週7回、つまり毎日レッスンを行うようになっている。
こちらからそのようなことを勧めたことは一度もない。
都内の大手の進学塾の上位クラスに位置する生徒なので、質問の内容はかなりの難問レベル。
私としてもここまでの難問を指導する機会は少ないので、より気合いが入っていたこともあるのかもしれないが、それ以外の要素で生徒の満足を高めていることがわかった。
私は算数の指導をしているのだが、生徒も私も実はとても歴史が好きで、かなりくわしい。
レッスンの最後に気分転換に歴史についてお互いの意見交換なども行っていたし、アニメの好みも一緒でその話題で盛り上がることもあった。
とても真面目な生徒なので、メリハリはある。
レッスンの全体のわずか1分か2分の話ではあるが、その時間も生徒にとってはとても有意義なものだったらしい。
好循環でレッスンへの集中力も高まり、算数のわからない部分もどんどん解消されていった。
そして生徒自身が母親にお願いしてコマを増やすことになったのだ。
レッスンを増やすメリットをくどくど話すことに時間を割いていたら、このような展開にはならなかったに違いない。
ただし、通常のスケジュールはパンパンなので、午前7時からのレッスン開始という特例だ。
つまり私は朝7時から晩の20時過ぎまで休日無くぶっ通しで働き続けることになったのだが、苦にはならない。
その生徒が本当に楽しそうにレッスンを受けてくれているのがわかったし、
「次のレッスンは23時間後ですね」
と明日が待ちきれないと言わんばかりのリアクションをしてくれるからだ。
昨日はSkypeのチャットが母親から届き、子どもにこのレッスンを受けさせてくれてありがとうと言われ、両手を握りながら感謝されたと喜んでいた。
夜になって顧問税理士の天海さんに電話で伝えたところ、
「期待以上のサービスを受けられたことで、
よりそのサービスを利用したいと
いう気持ちになったのじゃな。
それはまさにお互いが満足する利益を得られているWin-Winの関係じゃよ」
「確かに私もそこまで満足してくれて嬉しいですし、学習塾にとっても売上がアップに繋がります。生徒もより意欲的に学習するようになってその変化に母親も驚いていました。入会促進の話をするよりも満足度を高める対応が重要だということですね」
「UNIQLO創業者の柳井正氏も
『お客様の期待以上のモノを作ってください。
期待通りではダメで
期待以上のモノを作る』
と話されておったが、顧客感動とはまさにそれかもしれんの」