【このお話では、サラリーマンを続けていた40歳の松平はじめが、起業に挑戦し、税理士からアドバイスを受けて、成果を出すための大切な気づきをいろいろと得ていきます】
ようやく長い8月が終りを告げ、夏期講習会も終了した。
これまでになく暑い夏だったが、講習会もこれまでに経験したことがないほど忙しかった。
30人の塾生に30人の一般生、そしてオンライン生11人。
さらにこの夏デビューとなった2人の新人学生アルバイト講師。
朝から晩までいろいろな対応を迫られ、まさに八面六臂の健闘ぶりだったと自分自身を褒めたい気分だ。
生徒たちも真剣に勉強を取り組んでくれていたので、それぞれ課題を克服し、学力が底上げされている。
この講習会の成果は夏休み明けに行われる学校のテストではっきりするだろう。
しかし、塾業界はただ成績を伸ばせばいいわけではない。
生徒や保護者の満足を得て、さらにそこから入会に繋げていかなければならないのだ。
あからさまに入会数だけが夏期講習会の成果だと割り切っている大手学習塾だってあるほどで、民間企業である以上、売上アップは欠かせない目標の一つである。
懸念材料だったのは、少ない講師陣で大人数を対応しなければならないため、例年通りの入会活動ができなかったことだ。
レッスンの他に自習室の管理や質問受け、家庭への連絡・情報の共有に力を集約しなければいけなかったので、一般生への入会促進面談(勧誘)が疎かになった。
夏期講習会後半にこの問題をどう補うか、顧問税理士の天海さんにお盆の休み期間を利用して相談できた点が成果に大きく直結した。
「イメージすることは実現するという潜在意識の法則の生みの親であるジョセフ・マーフィー氏の言葉には、
『過去のことでクヨクヨしてはいけません。
大切なのは現在であり、
その積み重ねの未来なのです』
というものがある。
塾業界に関わらず
クロージング(契約)において重要なのは、
将来自分をどうイメージできるか
ということじゃろう」
「自分の未来をイメージ・・・・・・ なかなか難しいことですね」
「もちろんこの先、日本がどうなるか、人類がどうなるかは誰にもわからん。しかし、自分のことであればイメージすることは難しくないぞ。今の頑張りや取り組みを継続することで、2学期や受験の際にどんな未来が待っているのかという話じゃからな」
「一般生の保護者からも、この夏で勉強のやり方がわかり、習慣が身についたので2学期が楽しみだという感謝の言葉を多数いただいています。将来成功している自分をイメージしてもらうことで、この夏の取り組みを続けていきたいと思ってもらえばいいわけですね」
「今年の中学3年生は全員が志望校に合格した。入塾のメリットは実にイメージしやすいだろう。ただし、いかに入塾した方が良いとはいえ、家庭の経済事情も関わってくるから無理強いはNGじゃ。
強引な印象をあたえないように、
選択肢を与えることも忘れずにの」
「選択肢ですか? 入塾するか、入塾しないか、ですよね」
「問いかけるときは、いつ入塾するのかという選択肢にした方が効果的じゃろう。今なのか、冬からなのか、来年の春か、始めるタイミングによって将来も変わってくる。いつ始めるのが自分にとって一番良い選択肢なのか考えてもらうことで、自ずと答えは出てくる」
「今でしょ、ってやつですね。確かに勉強は早く始めた方が伸び幅も大きくなりますからね。わかりました。一度一般生だけを集めてその話をしてみます。長い時間は取れませんが、このまま講習会が終わって、ハイさようならでは生徒の将来にも、僕たちの将来にも良いイメージは湧きませんからね」