【このお話では、サラリーマンを続けていた40歳の松平はじめが、起業に挑戦し、税理士からアドバイスを受けて、成果を出すための大切な気づきをいろいろと得ていきます】
中学生の塾生は一斉に中間テストに突入した。
中間テスト前の2週間は自習室の利用率も上昇し、生徒も講師も全員がこれまで以上の成果を求めて必死である。
以前にさぼりが発覚して問題となった中学3年生も、担当する本多が生徒の気持ちも汲み取りながら話をし続けたことで、ガラリと変わって本気で勉強に臨んでいる。
今年の塾生たちの勉強に対してのひたむきな取り組みは昨年の雰囲気に匹敵するほど良い状態だ。
20年も講師をしていると、その取り組みの質でテスト結果もだいたい見通しが立つ。
その点、不安な生徒が圧倒的に少なく、どの生徒も成績を伸ばしてくれる期待感があった。
ただし、講師が面白くて、友人と塾で勉強するのがいくら楽しくても、成果が出なければ塾に通い続けることはできない。
得に最近は集団指導の名門進学塾の他に個別指導の学習塾も増え、さらにインターネットを利用して勉強する環境も整ってきているので、成果が出ないと感じたら通塾先や勉強方法をすぐに変えられる。
少子化が続いているにもかかわらず、そのパイを巡っての競争は過酷となり、営業面はひと昔前よりもかなりシビアだ。
だからこそ絶対に定期試験で成果を出さなければならない。
内申点に直結するので重要度は高く、それでいて試験範囲は狭いので準備はしやすい。
ここで伸ばせなくてどこで伸ばす?というほど失敗は許されないのがこの定期試験なのだ。
そのような話を電話で顧問税理士の天海さんと話をした際に、実に考えさせられるエピソードを聞いた。
「顧客が成果を求めていて、それに応えることができれば確かに満足してもらえる。しかし、今の時代は顧客を満足させるだけでは差別化は難しい」
「以前から天海さんがお話されていた顧客満足と顧客感動の違いですね。
顧客感動までサービスの質を高める必要があると」
「もちろん想像していた以上に成績が上がれば満足を超えて感動まで高めることができるじゃろうが、定期試験はそこまで難しくはないからの、だからこそ成績を伸ばすにも限度がある」
「そうですね、だからこそ講師も生徒も満点にこだわった取り組みをしてきました。ただ、テストを作成する先生が満点を阻止するような難しい問題を出題してきたりしますからね、なかなか実現は難しいです」
「難度が上がっているのであれば、平均点との差は広がっているはずじゃの」
「どの学年もほとんどの科目が1学期より難しくなりますね。特に理数系はその傾向が強いです」
「親御さんはそのことを認識しておるのかの? 純粋に素点だけを比べると1学期よりも得点が下がる科目もあろう。それで不審に思う親御さんも出てくるのではないか?」
「確かにそうかもしれません。学校でヒストグラムや成績表を渡されますが、そこまでしっかり見ているのかどうか・・・・・・」
「パナソニックの創業者である松下幸之助氏は、
『一方はこれで十分だと考えるが、
もう一方はまだ足りないかもしれないと考える。
そうしたいわば紙一枚の差が、
大きな成果の違いを生む』
という言葉を残しておる。成績を伸ばした、それで十分と考えず、そこに一手間加えることで不満を満足に、満足を感動に引き上げられるかもしれんの」
「そうか、テスト結果が判明したら、すぐに健闘した科目について労う電話がけをして、その中でこの頑張りがいかに素晴しいものだったのかを伝えていけば保護者の受け止め方も変わってきますね! ぜひ実行してみます」