【このお話では、サラリーマンを続けていた40歳の松平はじめが、起業に挑戦し、税理士からアドバイスを受けて、成果を出すための大切な気づきをいろいろと得ていきます】
11月も中旬になると中学受験はもう目と鼻の先、まさに秒読みのカウントダウンだ。
子どもにとっても保護者にとっても初めての受験というケースが多く、ここまで慌てずに取り組んできた家庭もにわかに揺るぎ始める。
特に都内の受験は、2月1日、2日、3日に渡り、さらに午前と午後で分けて受験可能なため、いつどこの学校を受験するのか選択肢がとてつもなく多い。
本命はだいたい1日の午前。
合否の結果はその日の夜には判明するため、2日以降のスケジュールは流動的だ。
だからこそ入念な計画とあらゆる事態を想定した準備が必要になる。
直接来塾して個別指導のレッスンを受けている塾生は地元の埼玉受験になるため、都内より一足先の1月受験だ。
本命受験の予行練習を兼ねて都内からも大勢の受験生が志願するため、倍率は定員をはるかに上回るのが通例。
例年と異なるのはオンラインの塾生が多く、都内受験をする塾生が8人もいることだ。
志望校はバラバラで、自宅から1時間30分かけて登校しなければならない中学校を志望している塾生もいる。
この時期になると志望する中学校の過去問集を解くことに特化し、最後の仕上げとなるのだが、難関校の問題は予想以上に難しい。
算数を本番同様50分かけて解いてみると100点中30点しか取れないのは珍しいケースではない。
中には15点という塾生もいる。
都内の有名難関校は世間がアクティブラーニングだと騒ぐ前からその要素を採り入れた教育方針で、ただ公式を覚えているだけや、特殊算を解けるだけでは太刀打ちできない。
講師ですら初見だとびっくりしたり、解けなかったりする極めて難しい問題が出題される。
学生アルバイト講師の石川を中心にしてオンラインレッスンをここまで進めてきてかなり落ち着いた状態だったのだが、あまりにも塾生が過去問に対応できずにいて、志望校を最終的にどうすべきなのか動揺している家庭ばかりになってきた。
ただでさえ人手不足で対応に四苦八苦している中、連日のように志望校について相談する連絡が来るので石川は完全にそちらに釘付けの状態だ。
実際にところ私もそこまで都内受験に精通しているわけではないため、石川ともどもどう対応していいのか頭を抱えていた。
不安で勉強が手につかないという声すらある。
顧問税理士の天海さんもその点には心配してくれており、今日も連絡をくれた。
「大きな進学塾のオープン模試を受けてC判定やD判定という結果がほとんどです。第4志望でようやくB判定やA判定ですね。受験のスケジュールの組み方がとても重要になってきました」
「初めての受験となれば親子ともに平常心でいるのは難しいじゃろう。そこではじめさんたち講師陣も不安げだとますます自信を失ってしまうぞ」
「ご家庭も私たち講師も地に足がついていないような状態かもしれません」
「やるべきこと、やれることは決まっておるのだからそれを信じて邁進するのみじゃろう。11月や12月の模試の結果だけで右往左往せず、
ここまで取り組んできた
努力を信じて
とことんやり抜くことが大切じゃの。
家康公は戦いで勝つのはどのような者なのかについてこう述べておる。
『戦いでは強い者が勝つ。
辛抱の強い者が』
とな。はじめさんはここまで我慢強く信念を貫いて経営を続けてきた。だからこそ今の成功があるのじゃろう。その成功体験をわかりやすくしっかり伝えていくことで大いに勇気づけられるのではないかの」