【このお話では、サラリーマンを続けていた40歳の松平はじめが、起業に挑戦し、税理士からアドバイスを受けて、成果を出すための大切な気づきをいろいろと得ていきます】
日本の人口は2023年の時点でおよそ1億2千万人。
毎年のように人口は減少し、14年連続人口減だ。
しかも2023年には史上初めて全都道府県で人口減少となった。
出生率は国の予想よりはるかに深刻で、こちらも史上初めて80万人を下回り、少子化の勢いは10年ほど前倒しで進行している。
子どもの数が減っていくということは、塾業界にとって大きな痛手なのは言うまでもない。
少子化ははっきりと確認できる状態で、高校が統合されたり、小中学校が廃校となることも珍しくはなくなった。
子どもの数が減るのだから、それだけ塾に通う生徒の数も減ることになる。
地方の塾にとっては生き残りをかけてどこも必死だ。
はたして日本の塾業界に明るい未来はあるのだろうか?
私は自ら経営する学習塾を法人化するにあたり将来の展望を改めて見つめることにした。
さらに過酷な少子化の時代において、塾生数をこれ以上増やすことはできるのだろうか?
売上はこれ以上伸びるのだろうか?
そう考えると疑問と不安が交差する。
私はこの点について顧問税理士の天海さんがどのような見解を持っているのか知りたくなった。
「なるほど、日本の少子高齢化問題は国の予想よりも深刻なのは間違いないの。2022年の通塾率は前年比マイナス1.3%じゃそうだ。少子化が転換期を向かえて子どもの数が増えるとしても、何十年も先のことになるじゃろう。」
「やはり塾に通う生徒の数は明らかに減っているんですね。いくら顧客満足、顧客感動を追求するサービスを提供しても、ここから先は塾生数がどんどん減っていくのではないかと危惧しています。日本の少子化問題について今更危惧したところで、私にはどうすることもできないのですが」
「はじめさんが心配するのは当然のことじゃの」
「やっぱり天海さんも塾業界の先は見えているということですか?」
「経営の神様と呼ばれた松下幸之助氏の言葉にこのようなものがある。
『普通の努力では
チャンスをチャンスと見極められない。
熱心の上に熱心であることが
見極める眼を開く』
というものだ」
「チャンスですか・・・・・・」
「はじめさんはより多くの生徒により良い教育のサービスを提供しようと、オンライン指導も始めておる」
「はい、それで今年の都内受験は8人となりましたし、高校生の塾生の数も増えました」
「その努力がチャンスを見極める眼を開いておるのではないかの」
「確かにオンライン部門が軌道に乗ったことで売上も目標を達成することができました。しかし、それでも少子化の影響は今後厳しく反映されていくのではないでしょうか」
「2023年の首都圏の中学受験の市場規模は知っておるのか?」
「いえ、減っているのではないのですか?」
「2022年が6万2400人だったのに対し、2023年は6万6500人じゃぞ」
「増えていますね!」
「しかも過去最多じゃ。
受験率は史上初めて22%を超え、
22.6%となっておる。
つまり首都圏の市場規模は
少子化の影響を受けずに
拡大しているということじゃな」
「時代は少子化問題を抱えていますが、すべてにおいてそれが当てはまるというわけではないということですね。子どもが少なくなった分だけ一人にかける教育費が増えた。子どもの将来に不安を感じ、より教育水準の高い中高一貫校に期待する傾向も強まったというか・・・・・・ 確かに対応していると都内の塾生のご家庭からはそういった感じを受けますね」
「はじめさんが熱心の上に熱心を重ね取り組んできたからこそ見つけられたチャンスではないのかの。じゃから塾業界に明るい未来がないわけではないぞ」