【このお話では、サラリーマンを続けていた40歳の松平はじめが、起業に挑戦し、税理士からアドバイスを受けて、成果を出すための大切な気づきをいろいろと得ていきます】
2週間後の12月下旬になると冬期講習会が始まる。
実際に始まってしまうと、朝から晩までレッスンの連続。
休み時間には一般生との面談を行い、夜には家庭へ状況報告するため、三面六臂の働きが求められる。
驚くほどにあっという間に1日が過ぎ去っていく。
だからこそ冬期講習会が始まるまでの期間がとても重要だ。
短い期間で一般生の勉強への意欲や取り組み方を変え、自信を与え、入塾したいと思わせるためには、冬期講習会前の事前準備の段階で何ができるかにかかっている。
特に初めて講習会に参加する一般生についてはこちらも面識がなく、情報も少ない。
そこへの対応策として、まずは学習状況についてのアンケートを記載して送信してもらう。
最近の定期試験の結果や内申点、志望校はどこなのか、何の部活に入っているのか、家庭学習の習慣はあるのかといった項目だ。
挨拶電話では直接保護者と話し、事前面談のアポイントを取付ける。
面談時間はおよそ30分。
塾のシステムについてや、志望校合格に必要な学力などを話した後、冬期講習会後の入会の意思確認。
講習会に参加した理由、講習会に求めるニーズ、そして将来に向けての目標、この辺りを明確にしていくことで、本当に必要とされるサービスを提供できるようになるのだ。
重要なのはここでの約束。
目標に向けて、さらに現状の課題点を克服するために、この冬休み中にどのように勉強していくのか具体的に約束を交す。
家庭学習の時間、その中身、講習会最後の模試の目標点を決め、生徒自身にその努力を実現することを保護者の前で宣言させる。
同時に私たち講師がどう支援していくのかについても話をし、取り組みや目標を生徒・保護者・講師で共有していく。
ここで重要になるのが、
課題を解決するための道筋を
どこまで示すことができるかだ。
そのために情報は事前に隅々まで見つめ、ヒアリングの内容を組み立てる。
課題を解決するための道筋をどこまで示すことができるかだ。
そのために情報は事前に隅々まで見つめ、ヒアリングの内容を組み立てる。
解決までのストーリーを講師側がイメージできないと短期間の冬期講習会で成果はあげられない。
それを冬期講習会が始まるまでに一般生52名全員と行うのだ。
私一人では到底厳しいので、指導力のある学生アルバイト講師の石川・酒井の手を借りる。
石川と酒井にはそのための研修も行ってきた。
30分の面談だが、濃い内容で質の高いものにすることがこの二人はできるようになっている。
人柄も魅力的だし、経験も豊富なので、どこの進学塾に務めても立派に正社員として働けるだろう。
今回の事前準備が始まる直前、私は二人にいくつか話をした。
「できない約束を安易にしてはいけない」
という点が一つだ。
過度に期待感を煽るような行為は墓穴を掘ることになる。
そしてもう一つ、顧問税理士の天海さんからの受け売りではあるが、アメリカ経営学者でマーケティングの第一人者として知られているフィリップ・コトラー氏の言葉だ。
『賢い起業は自社の製品が
確実に実行できることだけを約束し、
実際にはそれ以上のものを
市場に出して
顧客を喜ばせることを目指す』
これが事前準備と冬期講習会を通じて達成したい目標だ。
繰り返しになるが、その目標を達成するためには質の高い事前準備が不可欠なのである。
レッスン自体は12月下旬から開始というだけで、一般生にとっても講師にとっても冬期講習会は実はそれ以前から始まっているのである。