2024年夏期講習会前半が終了し、1週間の休み期間に入った。
夏期講習会前半の新規入会はゼロ。
夏の入会については長期戦になるのがいつものことなのでゼロの数字でも問題はないが、夏期講習会後半にどんどん入会数が伸びていくという感触を得られていないのが頭痛の種だ。
そんな中で気にしないようにしようと思っていても気になるのが、この夏に他県から進出してきた進学塾大手の「清洲予備校」。
夏期講習会の途中経過としてどのくらいの入会になっているのかなどもちろん確かめようがないので想像しかできない。
はたしてうちと同じく苦戦しているのか、それとも前半戦から活気付いているのか。
気にしてもどうしようもないことはわかっているのだが、休み期間で生徒対応もないとついついそんなことばかり考えてしまう。
どうにか気持ちを切り替えたくて私は顧問税理士の天海さんの事務所に電話をした。
「はじめさんお疲れさんじゃったの。せっかくのお盆休みじゃ。夕食でも一緒にどうかね」
天海さんの提案に対し、私は喜んですぐに快諾。
「ありがとうございます。休みになるとあちらのことがどうしても気になってしまって困っていたんです」
「まあ、神経質になるのも無理のない話じゃからな。目の前に注力すべき生徒がいない状態だとそうなるか。ではいっそのこと競合分析でもしたらどうじゃ?」
「競合分析ですか、相手をより深く知るべきということですね」
「中国の春秋時代の武将である孫子の言葉にもあるじゃろう。
『彼を知り己を知れば百戦殆からず』
とな」
「相手と自分の事をよく知ったうえで戦えば負けることはない、という意味ですよね」
「そうじゃ。この場合に重要になるのは、相手と自分の長所と短所じゃな。
相手と自分の優劣をしっかり知ったうえで
戦略を立てることが有効というわけじゃ」
「夏期講習会の様子もまったくわかりませんし、相手を知るということはなかなか難しいことだと感じています」
「まずはインターネットのWebサイトを利用して調べるのがいいじゃろう。競合調査で使用されるフレームワークはいくつかあるが、その中にバリューチェーン分析というものがある」
「バリューチェーン分析、聞いたことがないですね。どのような分析なのですか?」
「バリューチェーン分析とは、
商品や販売方法からアフターサービスまでの活動を
鎖(チェーン)として捉えて、
どの部分でどのような付加価値(バリュー)が
生み出されているのかを分析するんじゃ」
「なるほど、1年間の中でどのようなイベントを行い、どのような成果をあげているのかという点に注目するのですね。そういえば夏期講習会の中休みには、夏合宿を行うと聞きました」
「確かはじめさんも夏合宿をしたいと話していたことがあったの」
「はい。この夏から始めようかと考えていたのですが、ニーズがあまりにもなく取りやめました。夏合宿で何を提供できるのか私としても曖昧だったので、付加価値を生み出せなかったんです」
「清洲予備校がどのような夏合宿を行い、どのような顧客満足を得ているのかは知っておいて損はないじゃろう」
「中高一貫校を5日間貸し切って合宿を行うそうです。参加者はおよそ1000名とか、おそらく進出している他県からも希望者を募っているのでしょう」
「それは脅威じゃの。あちらは大手で首都圏にも進出しておる。この夏にかける小学6年生は大勢おるはずじゃ」
「そうなると、
地域の特性を踏まえつつ、
自社強みと弱みをどう工夫してこの脅威に打ち勝ち、
貴重な機会を失わないようにするのか
戦略的に考えていく必要があるわけか。
ウジウジ悩んでいるよりも、そのことを考える時間に充てた方が建設的ですね」