2024年夏期講習会はいよいよ後半戦スタート。
残り期間はおよそ10日間あまりだ。
前半戦と後半戦の間には1週間ほどの休みがあり、他県から進出してきた「清洲予備校」はこの期間を利用して全地区の塾生を集めて夏合宿を行っていた。
首都圏の中高一貫校を目指している小学6年生の塾生はこの夏合宿にほとんど参加しているようで、講師・塾生共に休みなくぶっ通し状態ということになる。
私たちとしても、休む暇もなく夏期講習会の対応をしていると言ってはいるが、比較するとそこまで自分たちを追い込んではいない。
夏期講習会前半だけで疲労困憊のこの状況で、夏合宿の準備や実際に開催するとなったらどのくらいの負担になるのか、想像するのも恐ろしいほどだ。
そもそも私の学習塾の講師の人数では、体力的・精神的に夏合宿など実現できるのかどうか怪しい。
そう考えると妙な劣等感を抱いてしまう。
他人の芝は青いというが、まさに競合のサービスや付加価値はまぶしく見えてしまうものなのかもしれない。
この1週間の休みで私は清洲予備校の競合分析を行ってみた。
顧問税理士の天海さんのアドバイスを受けてバリューチェーン分析をしてみたのだ。
もちろん分析については素人で、入手できる情報も限りがある。
ただし、幸いにも夏期講習会前の交流会で、清洲予備校の本部の見学やサービス・システムの説明を受けていた。
資料をかき集め、できる限りあちらの主活動や支援活動(人事・労務管理・人材育成など)をもう一度見つめ直してみたのだ。
夏合宿だけではなく、私の学習塾では行えていないサービスや付加価値がいくつも見つかった。
大規模だからできるオリジナルの模試、リンクしたレッスン内容やオリジナルテキスト、学力によるコース分け。
レッスンを休んでしまった際に見られるレッスン動画まで用意されている。
それ以外の点は大差ない。
定期的に行う学習面談や家庭への連絡、自習室の開放や質問受け、切磋琢磨できる仲間の存在。
比較していくにつれ、あちらになくこちらにある、いわゆるメリットというものが本当にあるのかどうか不安になってきた。
天海さんは私がそこに陥ることを見通していたようで、ハリウッド映画の名女優オードリー・ヘップバーン氏の
『自分を客観的に見なくてはなりません。
ひとつの道具のように分析するのです』
という言葉をアドバイスに添えてくれていた。
つまりそこまで冷静に自分を見つめなければ有効な分析比較はできないということだろう。
私は1週間の休みの中で、すべての学生アルバイト講師と電話で話をした。
私ひとりの視点ではどうしても偏ってしまうので、
事実を客観的に把握するために
従業員へのヒアリングを行った。
「ひとりひとりの学力や個性を配慮して、親身で的確なレッスンができている。ここまでしてくれる塾を初めてみた。私が子どもの頃に通うことができていたらもっと成績は伸びていただろう」
という話がひとりの講師から聞けた。
親身で丁寧な対応はどの塾もアピールポイントにしているが、実際のところその差はよくわからない。
お題目のようなものになっているのでむしろアピールすることでもないとすら思っていたが、もしかするともっと胸を張って大きな声でアピールしてもいい点なのかもしれない。
「講師間の情報共有がびっくりするほどしっかりされているので、対応がきめ細かい」
という話もあった。
日ごろ当たり前のようにやってきたことだが、実はそれが私たちの一番の強みなのかもしれないと初めて気がついた。
弱みは嫌でもすぐに気づかされるが、
自分の強みというものは
意外と気づきにくいものなのかもしれない。