2学期がスタートし、気になるのはやはり「清洲予備校」の塾生数。
無料で開催された夏期講習会は、コスト面や知名度の効果で大反響だったようだが、問題はそこから何人が入塾したのかだ。
他県から新規で進出してきているので、文字通りゼロからのスタート。
まさかいきなり私の学習塾の塾生数に追いつくなんてことはないとは思うが、本部の有力講師を夏期講習会に送り込んできたのだから想像以上の成果をあげる可能性はある。
ということで、こっそりと塾授業の終わる時刻を見計らい偵察へ。
校舎外に並んでいる自転車は10台ほど。
とても整理されて並べられており、講師陣の心配りがよくわかる。
加えて保護者の送迎の車が見渡す限り8台。
通行の邪魔にならないやや離れた場所で待っている。
この辺りもしっかり指示伝達が保護者まで伝わっていることを物語っていた。
こういった面が疎かになり、地域とトラブルになる学習塾も少なくはないのだ。
ちょっと様子をうかがっただけでも清洲予備校の質の高さがよくわかった。
曜日や時間帯によってレッスンのある学年が異なるので確かなことはわからないが、18名以上の入塾はあったようだ。
そのほとんどが体格からして中学3年生だろう。
以前に私の学習塾の夏期講習会に参加したことのある顔もちらほら見受けられる。
やはり清洲予備校は脅威だと再認識させられた。
単なる大手の進学塾だからというのではない。
サービスの質にこだわり隙がなく、無料だから参加したという客も魅了する力を持っているからだ。
翌日の昼には顧問税理士の天海さんと一緒に食事をし、2学期の対策について話をさせてもらった。
「ここからは清洲予備校とのガチンコ勝負ですね。同じ中学校に通う塾生が多いですから、やはり10月に行われる2学期の中間テスト結果で比較されることになりそうです」
「今回は日和見で入塾を見送った一般生も、2学期最初の定期試験の結果を見てどこに入塾するのか決めるかもしれんの」
「前回の定期試験ではうちの塾生がトップ3を独占しましたので死守したいところです! やはり学年トップが通っている塾は成果が期待できるという大きな説得力になりますからね。逆にここを覆されると評判が覆り冬期講習会の募集にも影響しそうです」
「確かに上位層が通っている塾というのはアピールポイントになるの。しかしそれだけに注目してしまうと市場規模を小さくしてしまうのではないか」
「市場規模が小さくなる・・・・・・ それはつまり上位層だけの取り合いになってしまい、中間層以下が取り残されるということですか」
「ここから塾生数を増やすためには中間層をいかに取り込めるのかが勝負になりそうじゃ。そうなると上位層をアピールするだけでは逆に敷居の高い塾と思われて足が遠のくかもしれぬ」
「別のアピールポイントも必要だということですね」
「ハリウッドの名女優であったオードリー・ヘップバーン氏の言葉に、
『女らしさを証明するためにベッドルームはいらない。
りんごを木からもぎ取るしぐさや
雨の中に立ち濡れるだけで
セックスアピールを表現することもできるわ』
というものがある」
「学力が伸びる、成果が出る、それは上位層のアピール以外でもできますね。例えば、今回の夏期講習会から入会した塾生が、2学期中間テストでどれだけ伸ばしたか、伸び幅も大きなアピール材料になります。それだと中間層も自分のことにように受け止めることができるでしょう。
競合他社と差別化するためのアピールポイントが、
先入観にとらわれすぎて
狭くなっていたかもしれません」