10月の後半となり、2024年も年末が迫ってきた。
塾講師としては、2学期の期末テスト対策、中学受験対策、冬期講習会募集と目が回るほどの忙しい時期を迎える。
振り返ると昨年の冬期講習会募集は、中学3年生が21名と躍進し、トータル50名もの一般生が参加してくれた。
オンライン生の講習会生も含めれば実に63名という大勢の一般生の受付があり、嬉しい悲鳴をあげたものだ。
しかし今年はそう簡単にはいきそうにないだろう。
他県から大手進学塾「清洲予備校」が進出してきたからだ。
そのおかげで夏期講習会の募集は大苦戦を強いられた。
現状として一番気になるのは、清洲予備校が前回の夏期講習会同様、無料で開催するのかどうかである。
以前にも近隣に建った個人塾が無料講習会を開催していたが、影響力はさほど大きくなく、ダメージは限定的だった。
だが、知名度が格段に高い清洲予備校がこれをやってくると脅威だ。
夏のときと違い、現在では清洲予備校に在籍している塾生がいるので募集の際の生徒間の広がりは、夏のとき以上になると予想される。
ぼんやりしていると夏期講習会以上にキツい募集結果になるだろう。
冬期講習会の募集を開始する前に、私は顧問税理士の天海さんの事務所を訪ねた。
いつも親身になって相談に乗ってくれる天海さんは、この日も笑顔で私を迎えてくれた。
「どうやら清洲予備校は冬期講習会も無料で開催するようです。あちらは資金力があるから持久戦で勝負してくるつもりなのかもしれません。そうなると来年度の春期講習会や夏期講習会も無料開催です。こちらも対抗して無料でというわけにはいかないので、苦戦は必至ですね」
「確かに無料開催は一定のニーズがあるじゃろう。しかし、だからといって手の打ちようがないわけではない。
無料サービスにはメリットもあれば
デメリットもある。
無料サービスのデメリットをしっかり理解したうえで
対策を練れば、対抗することは可能じゃぞ」
「無料サービスのデメリットですか? 売上がないうえに人件費がかかるという点ですよね。この点があまりにも大きい負担なので、私の学習塾では実現不可能なんです」
「それは経営者にとってのデメリットじゃな。顧客にとってもデメリットがあるじゃろう」
「無料で講習会を受けられるのにデメリットが? まあ、いろいろな層が集まってくるでしょうね。中には無料だからといい加減な気持ちで参加する生徒も混じってきそうです」
「そうじゃ。お金を払っていないのだから授業をさぼっても、遅刻しても、話を聞いていなくても特に問題ないという意識になる生徒もおるじゃろう。そうなるとどうなる?」
「教室の雰囲気が悪くなりますね。熱気がないでしょうし、真剣に勉強しようとしている生徒にとっては迷惑です」
「そんな環境で真面目な生徒は満足するかの。日清食品の創業者である安藤百福氏の言葉に、
『お客様は神様です、
という言葉があるが、
消費者は神様以上の厳しさをお持ちである』
とある。
真剣に勉強に向き合っている生徒こそ、
無料開催で緊張感のない講習会のムードに
嫌気がさすのではないか?」
「その違いを上手に伝えていけば、有料で開催する講習会のメリットを理解してもらえそうですね。今回のYouTubeチャンネルにも冬期講習会受付動画を作成してアップし、私たちの冬期講習会がどれだけ活気溢れる魅力的なものかアピールしていきますよ!」
「この地域での実績ははじめさんの学習塾の方が上じゃ。無料講習会などに危惧することなく、自信を持って募集活動をすればよい。真剣に勉強をできる環境を提供したいという熱い思いは塾生たちも伝わって、一般生を誘ってきてくれるはずじゃよ」