2025年4月となり、物価高騰に頭を悩ませている中、さらに追い打ちをかけるような大きな発表がアメリカホワイトハウスであった。
トランプ大統領が世界中の国々対し、相互関税を導入する大統領令に署名し、大々的に発表したのだ。
相互関税と聞くと、とても平等的で健全な貿易という印象を受けるが、現実はまったくの真逆で完全なるアメリカファースト。
日本については、非関税障壁も含めてアメリカ輸出分に46%もの関税を課しているという言い分で24%の課税を課される衝撃の内容だった。
これは政府関係者だけでなく多くのエコノミストが、予想を上回る関税率に驚きの声をあげると共に、同様の関税を課せられる世界中が怒り心頭の状態に陥っている。
日本からの輸出の1/3を占める自動車については2.5%のこれまでの関税率に25%が上乗せされて27.5%となるという異常事態。
国内の550万人ほどが自動車産業にかかわっており、その影響は計り知れない。
一説には日本のGDPをおよそ4兆円押し下げるともささやかれている。
中国はいち早く報復関税の処置を発表し、アメリカはさらに関税率を引き上げるというチキンレースに発展。
もっとも恐れている貿易戦争が現実のものとなってきた。
日経平均も含め世界中の株価が大幅に下落。
皮肉なことにアメリカでもダウ工業株が史上3番目の下げ幅を記録するなど急落。
アメリカファーストを唱えての経済政策ではあるが、世界だけでなくアメリカ自体もさらなるインフレと景気後退の警戒感に包まれている状態だった。
もちろんトランプ大統領のことなので、あくまでも脅しからの外交手段であり、交渉の余地は残されているのだろうが、世界経済が激変したのは間違いない。
ここ連日、トランプ大統領の言動によって株価も為替も異常なボラティリティーになっている。
政府高官の話しではないが、まさに「朝起きたら世界が変わっている」事態だ。
日本政府もトランプ大統領に振り回されてドタバタ状態。
さすがにこの事態は予想外で、びっくりしているだろうと顧問税理士の天海さんの事務所を訪れたのだが、意外にも天海さんは落ち着いた表情をしていた。
「まさか天海さんはここまで大きな話になると考えていらっしゃったのですか? 46%の関税率も想定内だったとか?」
「まさかな。さすがにここまでふっかけてくるとは思わなかったわい。日本とアメリカにはこれまで培ってきた関係があるから特別扱いの枠に入ると考えておったが、甘い考えじゃったようじゃの」
「近年右上がりの日本のGDPが下落に転じる予測になるとは青天の霹靂ですよ。世界中で貿易摩擦が激化したらそれこそとんでもないことになります。企業の収支はまったく変わってきますし、ビジネスの形も変わってくるでしょう。私にはもうこの先の未来がまったくわからなくなってきました」
「確かに大きな変化ではあるの。経済学者ですらこの先を予想するのは困難じゃろう。
しかし、
変化にはリスクといったデメリットだけではなく、
新しいチャンスが生まれるというメリットの面もある」
「チャンスですか・・・・・・ 現状は不安しかないですが・・・・・・」
「中国で製品を作っているアップルなどは株価暴落で想像もできないほど頭を抱えているじゃろうが、そのアップルでリーダーシップコーチを務めていたロビン・シャーマ氏の言葉にはこのようなものがある。
『変化は最初は難しく、
途中は混沌としていますが、
最後は美しいものです』
とな」
「希望をもって変化を受け入れろということですね」
「人類も世界も経済も変化していくものじゃ。
変化を楽しむ余裕をもって
新しいチャンスに備えていくことが
経営者には必要になるじゃろう。
悲観的になっても何も変わりはせんぞ」