コラム



税理士がサポート!『はじめて起業ものがたり』  「起業って何から始めればいいのか 224 頼みの部下が欠勤続きの際の対応」

 

今回のポイント
 不当解雇に注意 

 

 

いよいよ2025年の夏期講習会スタートというタイミングになって、事態は深刻化した。

 

オンライン部門責任者である石川のパワハラ疑惑に端を発した今回のトラブル。

オンライン部門以外の講師陣も巻き込み衝突。

もともと頑固者が多いメンバーの中でも、石川は顕著で、決して他人の意見に左右されることがない。

信念に従った自分の行動に非を認めることはなかった。

 

私は石川のそういった価値観を受け止めながら何度も面談をしたのだが、頑なになっている石川にコーチングがなかなか効果を発揮できず打開とはいかない。

 

酒井や本多らにも柔軟に石川と接してほしいと伝えたのだが、これもまた不発。

むしろ険悪なムードが高まる結果となった。

 

 

互いに自分が正論と信じ切っているだけに一度もつれた糸はそう簡単にはほどけない。

まさかここまで問題が長引くと考えていなかった私の落ち度も影響している。

 

もっと早く状況に気づき、もっと早くに石川とじっくり相談をしておくべきだった。

後悔先に立たずとはまさにこのことだ。

 

そして、夏期講習会を3日後に控えた時期から石川の欠勤が始まった。

 

学生アルバイト講師時代も含めて石川が欠勤するのは初めてのことである。

 

体調が悪いとの電話があり、それが2日目、3日目と続いた。

 

復帰してくれると期待していた夏期講習会スタートのタイミングでも体調不良で欠勤。

 

オンライン部門は全国各地に外部委託の講師がいるので、石川の穴の空いたコマはなんとか対応可能だ。

 

しかし、実際に通ってくる生徒対応については完全に人手不足である。

何かあった時に備えて私のシフトだけは少し余裕を持たせていたのだが、それもパンパンになり、本多や榊原、井伊にかなり無理を言ってフルレッスン対応をお願いする始末。

 

自習室管理もいなければ、鳴った電話をとる講師もいない。

 

それもそのはずで石川は私の学習塾で人気ナンバー1を誇る講師なのだ。

シフトがもっとも忙しいのが石川だった。

その穴を埋めるのは容易なことではない。

 

個別指導を担当する学生アルバイト講師を即席で採用するのも無理。

研修を含め多くの時間を要するので間に合わない。

そもそもそんな研修をする余裕も人手もなかった。

 

夏期講習会初日は大混乱。

 

電話が鳴れば誰かが生徒に演習させてとりあえずとる。

話す時間はないので夜に折り返すということを伝えて切るのだが、その要件だけでも20件ほど。

 

対応する生徒には原則個別指導なのだが、講師ひとりに対しての生徒数を増やしてほぼ集団指導のような感じだ。

 

昼食時間どころか休憩時間もまったくとれない。

それが朝8時から夜の10時まで続く。

ブラック企業でもさすがにここまで過酷ではないだろうというレベル。

 

そこから担当分けての折り返し電話、急遽担当の変わったオンライン講師の報告受け、掃除、報告会・・・・・・

 

 

終了したのは夜の0時。

みんなの表情は疲れというよりも怒りの色があらわになっている。

すべて石川のせいだと言わんばかり。

 

酒井に関しては、怒りを通り越して、「石川をすぐに解雇すべきだ」と語気を強める始末。

 

しかし事前に顧問税理士の天海さんから、

 

従業員をいきなり解雇にしたり、

 

威圧的に対応するとハラスメント問題に発展する

 

危険性があることを聞いていたので、

 

慎重にしなければならない。

 

翌日もみんな朝6時起きの8時仕事開始だ。

帰宅しても数時間しか休む時間はない。

はたしてこの環境で最後までもたせることができるのだろうか。

入会活動に集中することなどとても無理。

下手すれば生徒の不満が募り、退塾意向が出る可能性すらある。

 

天海さんが話をしていた家康公の言葉をわたしは思い出していた。

 

平氏を亡ぼす者は平氏なり。

 

鎌倉を亡ぼす者は鎌倉なり

 

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