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税理士がサポート!『はじめて起業ものがたり』  「起業って何から始めればいいのか 237 従業員の不祥事防止のポイント」

 

今回のポイント
 物理的な対策 

 

 

冬期講習会まで残り2ヶ月となり、即戦力となる人材確保が急務のため転職エージェントを積極的に利用する運びとなった。

さらに並行して取り組まなければならないのが「組織改革」である。

 

これまで大黒柱となる石川にオンライン部門を任せ、同時に講師の育成にも大いに貢献してもらっていた。

その石川がもういない。

オンライン部門は当面の間、経営者である私が陣頭指揮をとり、講師の育成研修については石川の同期である酒井に一任している。

助っ人の山内も本多や井伊にいろいろなアドバイスをしてくれているので、最近の二人の成長は著しい。

これは嬉しい誤算だった。

 

しかし、現在欠勤中の石川がみんなの予想通りに競合である清洲予備校に転職したら、いろいろな弊害がおきてくるだろう。

 

 

オンライン部門において進めている「難関中高一貫校合格者を多数輩出していく」という新規プロジェクトも一端は頓挫することになる。

 

それだけではない。

なにせ生徒や保護者だけでなく、講師陣や教室の隅々まで一番把握しているのが石川だったのだ、弱点もしっかり押さえているはずだ。

 

私たちの弱点はどこなのか?

講師陣の中で本当にその点と向き合ってきたのは石川だけではないだろうか。

だからこそ酒井や本多らに煙たがられたのかもしれない。

石川は他の講師では気づけていない弱点に気づいているに違いない。

だからこそ組織改革が急務となるのだ。

 

相談できる相手は顧問税理士の天海さんしかいない。

 

「なるほどの。それで組織改革か。家康公もその昔、右腕として働いてきた伯耆守が出奔し、秀吉側に走った際には大いに苦労したそうじゃ。これまでの軍制を一変し、武田流に改めたという」

 

「石川が抜けてしばらく経過していますが、従業員の取り組みはかなりアバウトになってきていると感じざるを得ません。何か生ぬるいというか・・・・・・ これまでの良い緊張感が欠けてきているんです。これが大きな失態に繋がるのではないかと危惧しています」

 

「ここ最近の日本では教師や講師の不祥事が相次いでおるからな。世間の目も厳しく光っておる。予防策として引き続き研修などを実施し、改めてコンプライアンス意識を高める必要はあるじゃろう」

 

 

「これまでは不祥事の実例をみんなで共有することでコンプライアンス意識を高め合ってきましたが、最近の事件を知るとそれだけでは不十分だなと考えています。もちろん本多や井伊を疑っているわけではないですが、隙は絶対に見せない覚悟がなければなりません」

 

グループ討議や自らの習慣の振り返りだけではなく、

 

もっとはっきりした物理的な対策も

 

不祥事防止のためには必要じゃとうことか

 

「トイレなどにカメラなどが設置できないよう、整理整頓だけでなく点検も毎日行います」

 

「そういった事件は毎日のように聞くからの」

 

「講師と生徒のLINEなどのSNSによる繋がりは徹底的に阻止します。講師・生徒ともにスマホなどを出すことも禁じます。プラーベート保護もあるのでスマホのLINE内容のチェックなどはできませんが、不審な行動がある場合は確認していきます」

 

「あとはレッスン時の接触じゃな。体罰やわいせつ行為もよくニュースになっておる」

 

「握手以外はすべての接触を禁じます。すべての教室に監視カメラの設置も決めました。講師と生徒の一線があまくならないような最低限の措置です」

 

「はじめさんの覚悟のほどはよくわかった。歴史小説家童門冬二氏の言葉には改革についてこうある。

 

改革を実行するということは、

 

まずは改革にあたる者が自分を変えることだ

 

との。はじめさんが己自身に、今まで以上に厳しくなる必要もあるぞ」

 

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