2025年も年末・11月。
塾業界最大の繁忙期に突入目前となった。
冬期講習会募集を皮切りに、冬期講習会の開催、正月特訓、受験生用の特訓ゼミ、定期試験対策、春期講習会募集、受験、新年度生の入会活動と様々な活動を並行していく必要がある。
まさに猫の手も借りたいほどの忙しさ。

石川の戦線離脱が確実となり、助っ人の山内も起業準備で抜ける状態でここを乗り越えていけなければならない。
転職エージェントをフル活用して即戦力の人材を探しているが、まだ本決まりには至っておらず暗雲がたちこめている。
さらにオンライン部門講師の大賀も11月で辞めることが確定。
石川がいないことでオンライン生がすでに5名退塾となっており、8名の退塾意向を抱えている中、追い打ちをかける事態だ。
ただし、オンライン部門の講師には、まだ春日、大久保、鳥居といった実績のあるベテラン勢が在籍しているので、これでも最小限の被害で食い止められていると言える。
オンライン部門の講師は外部委託という関係性で、正式な社員ではない。
講師陣が互いに顔を合わせたこともほぼない。
現状としてはあくまでもオンラインレッスンを依頼するに留まっている。
愛知県在住の大久保もそんなオンライン講師のひとりだが、積極的にいろいろと提案してくれる貴重な存在だった。
オンライン部門がかなりバタついている状態の中、大久保が面白い話をしてきた。
それは「インターナショナルスクール」を対象にした今までにない視点だった。
私は早速この話を顧問税理士の天海さんに伝えた。
防戦一方では気持ち的に滅入ってしまう。
果敢に打って出ることも重要だと考えたからだ。
「アメリカの学校などは9月が新学期スタートです。日本でもグローバル化のために4月入学からの移行が検討されたことがあります。諸問題が絡んでなかなか難しい話ですが、日本にあるインターナショナルスクールには海外と同じく9月入学のケースも多いんです」

「そういった生徒をサポートするレッスンということじゃな。確かに地元の学習塾ではカリキュラムも異なるし、そもそもオールイングリッシュという点で一緒にレッスンを受けるメリットがないの。オンライン部門での個別指導でしか対応はできないというわけか」
「特にこれまで日本の学校に通っていて、途中からインターナショナルスクールに編入するとたいへんです。実際にそういったオンライン生を大久保が担当していまして、詳しい内容を確認できました」
「カリキュラムがすべて英語であるという違いだけではないと?」
「はい。その生徒は中学3年生で9月から編入したのですが、数学は箱ひげ図などのデータ分析からスタートです。教科書がなく、オンラインでのスライドが教材。内容は日本の中学生が学習するデータ分析に留まらずPPCMMといった高校生が習う相関係数まで扱っているんです。さらに試験の内容も仕組みもまったく違うので、戸惑うのも仕方ありません。IB(国際バカロレア)やケンブリッジの国際教育プログラムなど仕組みも様々です」
「日本人でもグローバル化に対応するためとインターナショナルスクールに通わせる家庭も増えているからの。対応に困っておる生徒は大勢いそうじゃ。そこにアピールしていくというわけか」
「グローバル化やICT教育、
AIの活用と教育業界はどんどん複雑化しています。
だからこそ私たちが入り込む隙間も
生まれているのではないでしょうか」
「転んでもただでは起きぬとはこのことじゃ。アメリカの自己啓発作家であるナポレオン・ヒル氏の言葉に
『チャンスは、不運や一時的な敗北という姿に
化けてやってくることがある』
とある。組織改革と共に新しいチャンスを見つけ、チャレンジをするとはさすがはじめさんじゃな」

