コラム



税理士がサポート!『はじめて起業ものがたり』  「起業って何から始めればいいのか 244 顧客満足度を高めるためのQSC」

 

今回のポイント
 清潔感:Cleanliness 

 

 

12月も中旬となり、2025年もあとわずか。

師走の言葉通り、塾講師はあちらにこちらにと休み無く走り回っている。

 

対策を続けてきた中学生の期末テストは終了したものの、中学受験は本格的にスタートしたので最後の仕上げに奔走している状態だ。

高校受験も迫ってきており、中学3年生もピリピリした雰囲気になってきた。

自習室の利用者は増え、質問してくる生徒が並んで待っている。

 

さらに冬期講習会の募集もラストスパート。

塾生だけではなく、すでに申込になっている一般生にも友人紹介制度の利用を促して、1名でも多くの参加者を募っている。

 

 

一般生に対しては、保護者と生徒に来てもらい担当者が三者面談を実施。

学習アドバイスだけではなく、入塾の感触を確認し、冬期講習会中にどう攻略して入塾にこぎつけるか戦略を練る。

 

中途入社となった伊達には早速こちらの面談を担当してもらっている。

個別指導部門では正社員の伊達と酒井がほとんどの一般生の担当となり、学生アルバイト講師の本多や榊原、井伊にその都度指示を出してもらう予定だ。

 

伊達にはさらにオンライン部門での中学受験指導にも大きくかかわってもらい、合格に向けた最後の仕上げをしてもらう。

当初は私が指揮をとらなければと考えていたが、推薦枠の受験に落ちて意気消沈していた生徒とオンライン面談をして伊達が見事に立ち直らせたことで任せることに決めた。

 

ちなみに伊達の目立った成果は今のところそれくらいである。

 

伊達はあまり感情を表に出さず、生徒とも他の講師とも適度にコミュニケーションをとり、淡々と仕事を進めている印象だ。

 

都内の他塾に勤めていた頃の実績を誇らしげに語ることはなく。

どちらかというと様子見といった感じで働いていた。

 

伊達が働くようになってしばらくしてから、私は教室の雰囲気が今までと違っていることに気がついた。

生徒や講師がというよりも、教室全体が何か輝いて見える。

本多や井伊はまったく気づいている節はなかったが、女性講師の酒井や榊原は敏感に変化を感じている。

 

 

どうやら伊達が毎日教室内の環境整備を行っているのが要因のようだ。

 

掲示物が剥がれかけていたら張り直し、自習室の本棚を整頓する。

窓を拭くのは日課のようで、玄関も砂や泥は常に掃き出していた。

生徒の机の上も隅々まで拭き、ネジがとれている箇所などはその都度直している。

 

地道な作業の積み重ねだが、これが積もり積もると明らかに教室の清潔感が変わる。

そうなると不思議なもので、生徒や講師の行動から煩雑さが軽減され、気品のようなものを感じるようになるのだ。

 

この変化について私は顧問税理士の天海さんに電話で報告をした。

 

「指示もなく自主的にそういった取り組みができるとは、さすがはじめさんが見込んだ男じゃな」

 

「実績を誇って上司面する講師は、そういった点は疎かになるのが普通ですが、伊達はまったく違う価値観を持っているようです。今では本多や井伊まで指示しなくても清掃や身だしなみに気をつかうようになっています」

 

「明治時代の文学者、内村鑑三氏の言葉には

 

清潔、整頓、堅実を主としなさい

 

とあるが、近年のサービス業界でも顧客満足度を高める取り組みとしてQSCが意識されている」

 

「Qは品質(Quality)、Sはサービス(Service)でしょうか? Cは何だろう」

 

清潔感(Cleanliness)じゃよ。

 

清潔な環境を提供することで、

 

顧客が安心して利用でき、

 

さらに従業員のモチベーションも上がり、

 

組織が活性化する

 

「清潔感ですが・・・・・・ 確かに今までに欠けていた視点ですね」

 

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