2025年を締めくくる冬期講習会が始まり1週間が過ぎた。
短期決戦勝負の冬期講習感はもう折り返しである。
受験生以外は大晦日やお正月はお休みに入り、ラスト1週間。
受験生はその間も休まず正月特訓だ。
自習室で必死に勉強をしている先輩の姿を見て、他の学年の生徒たちも自然と真剣度が増していた。
「勉強する」という環境作りはまったく問題ない。

しかし、一般生の入塾となると話は別だ。
1週間を過ぎての入塾数はゼロ。
冬期講習会から入塾しようと参加してくる生徒はかなりレアなケースのため、現状としてはい例年通りである。
ただ今回については中途採用の伊達が入塾率100%という目標を掲げているだけに、一般生の動向は例年以上に気になるところ。
他の学生アルバイト講師たちも注目している。
もしかすると講習会開始前の三者面談の効果で、講習会初日から入塾申込書が続々提出されてくるのでは? という期待感があったが、やはりそんなに簡単な話ではなかった。
これには私を含め講師陣はがっかり。
伊達の表情はというと相変わらず飄々としていて動揺している様子はない。
前半の1週間で入塾者が現れないのは織込み済みということなのだろうか。
伊達は講習会前の宣言で、「ベネフィットの強調」のための三者面談と、各講師からの声がけについてかなり詳細に話をした。
内容や対応策は三者面談の内容をふまえ、一般生によってよく練られて講師一同驚いたものである。
ベネフィットはよくメリットと混同されがちだが、内容は大きく異なる。
例えば私の学習塾であれば、
個別指導の効果や自習室の便利さ、
講師陣の親身さといったサービスの特徴がメリット。
ベネフィットはそこで得られる顧客の利益をさす。

例えば私の学習塾であれば、個別指導の効果や自習室の便利さ、講師陣の親身さといったサービスの特徴がメリット。
ベネフィットはそこで得られる顧客の利益をさす。
個別指導の効果は、「弱点を見つけ学力を伸ばしやすい」
自習室の便利さは、「勉強への積極性が増し、勉強時間が増える」
講師陣の親身さは、「勉強や目標達成への意欲がアップする」
といった具合だ。
伊達はこのような声がけについて「ベネフィット話法」と呼んでいた。
生徒や保護者がこの学習塾を利用することで、
どのような価値があるのか、
どんな未来になるのかを
具体的にイメージしやすくし、
期待感を高め、行動を促しやすくする。
一般生に声がけをするチャンスはいくらでもある。
個別指導の最中や、自習室で質問に来るとき、来るときや帰るときの挨拶。
伊達はそこでの声がけに対し具体的な注文を各講師にしていた。
三者面談の際に打った布石がいきるような戦略である。
伊達自身も冬期講習会で入塾に転じさせる困難さをよく熟知しているだけに、冬期講習会の期間を目一杯利用するつもりかもしれない。
それでも折り返しのタイミングで入塾数ゼロは心配だった。
顧問税理士の天海さんから冬期講習会中は夜間でも電話してきてもいいと了解を得ていたので、中間報告を行うことにした。
「・・・・・・ というわけで現在の入塾数はゼロです。動く気配も今のところは特別感じられません」
「一筋縄ではやはりいかんようじゃの。しかし伊達という男はそれを見越してなお100%の入塾を目標に掲げたのじゃから、やはり何か策があるのではないか」
「伊達のいうベネフィット話法で、どれだけベネフィットが強調されているのかですね」
「ソフトバンクグループ株式会社代表取締役会長兼社長の孫正義氏の言葉に、
『現状を悲観的に問題視して解決案を考え、
未来を楽観的に夢抱き戦略を準備。
成功のひとつのアプローチです』
とある。
まさにそれを実践しているかのような取り組みじゃと思うが、はたしてどのような結果になるか楽しみじゃの」

