今回の衆議院選挙の争点のひとつとなった物価高対策。
円安による輸入品の高騰が大きな要因にはなっているものの、政府の掲げる政策は「賃金アップ」だ。
内部留保が問題となっている大企業にとどまらず、中小企業にもその波が押し寄せている。
一方で人手不足の問題も深刻化しており、優秀な人材獲得は企業の生き残りをかけた重要項目となっている。
賃上げができない中小企業には優秀な人材が集まらないどころか、離れていってしまうというのが最近の風潮だった。
かといって簡単に賃上げできないのが中小企業の大きな悩みだ。
特に塾業界の中小規模の学習塾は赤字経営または倒産の危機に瀕しているところが大多数である。
賃金アップ分を価格転嫁しようにも、それによって塾生が減ってしまえば立ちゆかない。
どの経営者ももどかしさを感じていることだろう。
顧問税理士の天海さんは、そんな中小企業の経営者が「知らない」または「知っていても利用していない」手法があると話をしてくれた。

はたしていったいどんな手法があるというのか。
「はじめさんは以前、教室の環境整備のために利用したことがあるじゃろう。猛暑による暑さ対策で断熱性の高いドアなどにリフォームしたときのことじゃ」
「ああ、そういえば国が主催している住宅省エネキャンペーンに申請して、補助金が交付されましたね。経済的にとても助かったのを覚えています。もしかして賃上げについても、国が主催する支援制度があるということですか?」
「実はいくつかあるのじゃよ。特に物価高が強く問題視されてきた最近は国も力を入れておる。2025年11月には賃上げ環境の経済対策が閣議決定された」
「具体的にはどんな支援を受けられるのですか?」
「例えば『賃上げ促進税制』がある。支払う給与総額が前年度より増えていれば、その一部を法人税から控除可能になっておる。
前年比1.5%増加であれば、増加分の15%。
前年比2.5%増加であれば、増額分の30%が税額控除される。
賃上げした年に控除しきれなくても、繰越は5年間までできる仕組みじゃ」
「税額控除で負担を軽減してくれるわけですね。あるのとないのじゃ大きな違いです。まったく知りませんでした」
「他にも『業務改善助成金』があるぞ。こちらは生産性を高めるための設備投資の併用も必要となるが、最低賃金を上げると設備投資の費用の一部が助成される。仮に従業員が2人から3人で、引き上げ前の最低賃金が1,000円以上で60円賃上げした場合、上限160万円、助成率3/4じゃ。上限と助成率の安い方が助成額となる」

「賃金を上げることで改装などのリフォーム費用や経理システム導入などの費用をかなり軽減できますね! つまり国の支援を利用することで、中小企業の賃上げの負担を軽くするわけですね。これは知らない経営者が多そうです。実際のところ私もそうですし」
「国の支援を利用することは決して悪いことではない。Apple創業者で変革のカリスマと呼ばれるスティーブ・ジョブズ氏も
『多くの人は助けを求めないから得られないことが多い』
と述べておる。
経営者はどうしても孤独になりがちじゃから、
国やアドバイザーに
助けを求める視点は持っておくべきじゃ」
「やはり情報というのは大事ですね。情報難民ほど損をするし、苦しい道を歩まざるを得なくなります。私は天海さんに巡り会えたことが人生で最も幸運な出来事ですよ」
「まだ賃上げ対策の国の支援制度はあるから、しっかりと内容を把握して、自分の経営に活かせるものは遠慮なく利用していきなされ」

