【このお話では、サラリーマンを続けていた40歳の松平はじめが、起業に挑戦し、税理士からアドバイスを受けて、成果を出すための大切な気づきをいろいろと得ていきます】
9月も下旬になると、暑さも和らぎ、秋の訪れを感じる時期である。過ごしやすい気候になってきたということもあるが、以前に顧問税理士の天海さんから生活習慣の改善についてのアドバイスを受け、それを実践するようになってから少しずつ疲れにくい体になってきた。無理をせずとも日々、リズム良く仕事ができるようになり、体にも心にも余裕が生れてきている。
「よし、空いている時間を有意義に利用するため、オンライン授業も始めていこう!」
オンライン授業とは、自宅にいながら、タブレットを使ってライブの授業を受けられる仕組みだ。ZoomやSkypeといった既存の無料ツールを利用すれば、ランニングコストを膨らませずに運営できるし、新しい顧客層の掘り起こしもできるので、売上アップにも繋がる。
現在は小学6年生、中学2年生共に月謝2万円となっているが、オンライン授業だと完全個別形式になるので、もう少し高い料金設定でもニーズはあるかもしれない。
「競合はどんな料金設定になっているのだろう?」
サイトをいろいろ調べていくと、1ヶ月4回(1回60分授業)で2万円前後という学習塾が多かった。問題はオンライン授業の場合、交通の面で制限がなくなるため、競合が近隣の学習塾だけではなく、全国に広がるという点だ。
「1ヶ月8回(1回60分授業)で24,000円であれば、比較的通いやすい料金設定だし、生徒1人につき週に2回、1時間ずつ時間を確保しなければいけないけど、うまく調整すれば5人程度は対応できそうだな。そうなると、5人で月に12万円の売上か。現状打開するには大きな売上だな」
コロナ禍でオンライン授業を受ける環境は、ほとんどの家庭で整っている状態だ。ニーズはあるはずだし、マーケットが近郊のみという状態から、全国に広がるので期待はできる。どれくらいの反響があるのかはやってみないとわからない。まずはホームページに掲載して、広告していく必要があるだろう。
早速、天海さんの事務所に電話して、このチャレンジについて相談してみた。
当初の予定にはない事業展開ではあるし、用意周到でもない状態なので、かなり厳しい指摘も覚悟の上だ。
「ほう、面白い試みじゃの。いいんじゃないか。現在、通塾している生徒に不都合が生じことがないのであれば、やってみるといい」
意外にすんなり許可が下りた。
「学習塾選びのサイトの方にも連絡して、内容を変更してもらい、そちらの広告効果を期待していきます。ホームページにもオンライン授業の仕組みや料金設定を掲載して、わかりやすく伝えていこうと考えています」
「一人でも多くの生徒に興味を持ってもらうためには、最初の1ヶ月くらいは無料体験期間にした方がいいじゃろうな。後は、はじめさん独りで通塾してくる生徒と、オンラインの生徒を対応しなければならないことを忘れずに、受け付けする生徒に制限をかけるべきじゃろう」
なるほど、確かに無料体験期間があった方が呼び込みやすいし、生徒の状況も確認してから責任もって引き受けることができる。
9月下旬から10月上旬の定期試験週間から告知を開始し、10月中旬からは対応できるように準備を進めていこう。
「家康公の言葉には、
『最も多くの人間を喜ばせたものが、
最も大きく栄える』
というものがある。
できる範囲の中で販路開拓をして、
これまで以上に喜ばせることのできる
顧客を増やしていくことは大切なことじゃ」