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税理士がサポート!『はじめて起業ものがたり』 「起業って何から始めればいいのか㉛ 徳川家康から学ぶ、結果が悪かったときのリアクション」

【このお話では、サラリーマンを続けていた40歳の松平はじめが、起業に挑戦し、税理士からアドバイスを受けて、成果を出すための大切な気づきをいろいろと得ていきます】

 

今回のポイント
 己を責めて、人を責めるな 

 

 

2021年も10月を迎えた。

中学校では9月下旬に定期試験が行われ、2人の中学2年生女子生徒が自己ベスト更新を目指して臨んだ。私の学習塾にとって初めて成果を試される大事な試験である。そのために個別にカリキュラムを組み、夏休み明けから試験対策をしてきたのだ。

 

A子は理系科目が大の苦手で、特に数学はクラスの平均点にも届かないことが多く、1学期の試験結果は30点。計算分野ばかりが出題される試験範囲でこの得点だから基本的に計算力がない。そのため中学1年生の正負の数から復習して、家庭学習では問題集を毎日3ページ分こなしてきた。それに加えて、中学2年生の連立方程式の文章題や一次関数の勉強。数学の家庭学習を1週間でトータル1時間もしてこなかった子が、毎日最低でも1時間するようになったのだ。計算速度や正確性が上がっているのは間違いない。

 

B子は科目による得意・不得意の差があまりなく、どの科目もクラスの平均点にもう一息で届くような位置。ただし中学2年生になり、数学と理科の難度が一気に上がったため最も不安な科目はA子と同じである。

 

 

私の手応え的には、2人とも数学・理科共に80点は取れるだけの力がついて試験に送り出した。

 

週明けに答案が返却され、A子は数学45点、理科61点。B子は数学52点、理科58点。予想よりもはるかに低い得点結果を聞いて、私は声を失ってしまった。

 

答案をよく確認してみると、数学は前半の問題に時間をかけすぎて、後半のすぐに解けて得点の取れる問題を解いていない。理科はミスした選択問題の多くが二択に絞り込むまではどれも当たっているが、最後に不正解の方を選んでしまっている。

 

2人とも結果報告時の表情は今にも泣き出しそうなほど暗いものだった。本人としても努力してきただけにこの結果に納得いっていないのだ。

 

なんと声をかけていいのか一瞬戸惑った。あれだけ試験の際に気をつけるようにアドバイスしてきたことが、半分も活かされていない。わかっていると返事していた問題が実際はよく理解できていなかったことも、答案を見ていて気がついた。

 

説教したい気持ちが強まる。

 

ただ、直前に税理士の天海さんに今後の経営について相談しており、その際に、ひとことアドバイスを受けていたことを思い出した。

 

 

 

「はじめさんは今回の試験にかなり気合いが入っておるが、相手はあくまでも子どもじゃ。しかもこれまで勉強の習慣がなかったわけじゃから、いきなり結果を求めるのは難しいかもしれんぞ。

 

人を育てるのには忍耐が必要

 

家康公のように我慢強さが不可欠じゃ。理想通りにいかないからといって、頭ごなしに叱りつければせっかく勉強することの面白さを感じ始めた子どもらの芽を摘むことになるかもしれぬ。その点だけは注意しなさい。家康公はこう言っておる。

 

己を責めて、人を責めるな

 

これが家康公の我慢強さの秘訣じゃろう」

 

そうだ。生徒を責める前に、まず指導者としての自分の取り組みを振り返ってみるべきだ。そう考えてみると、仕上げはまだまだ甘かったかもしれない。本番に備えた緊張感のある中での演習時間も少なかったし、本当にできるようになっているのか確かめる機会ももっと必要だった。指導者としてやれることはまだあったということだ。

 

まずはここまでの2人の努力を称えよう

 

勉強する習慣も身につき、学力も上がってきているのだ。その取り組みを認め、今回の反省を次の成功に繋げていこう。

 

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