【このお話では、サラリーマンを続けていた40歳の松平はじめが、起業に挑戦し、税理士からアドバイスを受けて、成果を出すための大切な気づきをいろいろと得ていきます】
師走は文字通りまさにあっという間に過ぎていく。
体調管理に気を配りながらも、生徒たちの指導には妥協せずに取り組み、中学生は今年最後の定期試験が終わった。中学受験の小学生は本番までついに残り1ヶ月を切っている。
それぞれに個別のカリキュラムを組み、弱点克服から取り組んでいった結果、新しく入塾した5人の中学2年生女子は全員得点がアップした。中でも驚いたのは入塾前の数学のテストが12点だった生徒が、今回40点まで得点を伸ばしたことだ。わずかな期間ながら3倍以上の得点になっている。生徒自身もビックリしていたし、その両親に至っては感謝を伝えるべくわざわざ菓子折を持って直接会いに来てくれた。もともとの塾生の2人も勉強の習慣だけでなく、本番の答案作成能力が向上し、取りこぼしなく実力を発揮できるようになった。2人とも8割には届かないものの、学年の平均点は楽々と突破している。
中学生の7人は明らかに良い循環だ。互いに励まし合い、切磋琢磨しているので、前向きに努力を積み上げられている。まさに理想的な環境。これなら高校受験までにまだまだ成績を伸ばすことができるだろう。
この広告効果はかなり大きく、今週だけで問い合わせの電話が10件もきていた。12月下旬から始まる冬期講習会より先に入塾して勉強したいという家庭も出てくるぐらいだ。新たに冬期講習会の申し込みは8件。塾生繋がりが多いが、完全に新規情報の生徒も現れてきた。塾生の話ではまだ冬期講習会に参加したいという生徒がいるらしい。冬期講習会まで残り2週間もあるから、まだ受付は増えるだろう。口コミで評判が広がるとやはり絶大な効果がある。
嬉しい悲鳴とはこのことだ。オンラインでの授業対応の生徒も1人増え、3人となっていた。今までと比較するとかなり大所帯になってきている。
しかし、一方でこれまで考えてもいなかった心配要素が浮上してきた。問い合わせの電話では一様に、『今回大幅に成績を伸ばした塾生のようにカリキュラムを個別に組んで対応してほしいと』という要望があった。はたして今のサービスが10人、20人と塾生が増えていく中で継続できるのだろうか。
今回は電話で、嬉しい報告と心配な点の2つを顧問税理士の天海さんに伝えることにした。
「評判がうなぎ登りで上がっていることは喜ばしいことじゃし、何より頑張っている塾生に感謝すべきじゃろう」
「そう思います。今、塾生一人ひとりに手書きの手紙を書いているところです。今回の取り組みを労いつつ、僕の感動した点をそれぞれ記しています。アナログな方式なんですが、次回の授業前に渡すつもりです」
「大事な働き掛けじゃ。そういった励ましで子どもたちはより勉強を楽しく感じ、さらに興味を持って取り組むようになる。後は塾生数が増えても続けることじゃな。
仕事を受けすぎて
サービスを低下させてしまい、
逆に評判を失ってしまうケースは
よくあること。
ここは絶対に注意しなければならない。
悪い評判ほど早く広まるからの」
「そうですね、肝に銘じておきます。そうなると軽々しく塾生数を増やせなくなってきているような気がして・・・・・・ 後のことを考えず手厚いサービスを提供し過ぎたでしょうか?」
「いやそんなことは決してないぞ。手厚いサービスを提供したからこそ今の評判が確立できたのじゃからな。
ここからしばらくは
成長よりも信用をいかに維持するかが
ポイントになりそうじゃ。
その対応策を検討していこう」