【このお話では、サラリーマンを続けていた40歳の松平はじめが、起業に挑戦し、税理士からアドバイスを受けて、成果を出すための大切な気づきをいろいろと得ていきます】
小学生や高校生は、中学生より先に受験本番を迎えている。小6は中学受験、高3は大学入学共通テスト。今まで培ってきた実力を発揮するときだ。
私の学習塾に夏から通っている小6の男子2名もそれぞれ志望している中高一貫校を受験した。体調は万全。当日応援に行くと多少緊張している表情をしていたものの、夏から比べるとたくましく成長している姿を確認できて担当講師として喜びを感じることができた。
中学受験の合否発表は速い。翌日の午後には発表される学校がほとんどだ。第1志望の学校に合格できれば受験はそこで終了。不合格であれば、別日に用意されている2回目の受験や、他の学校の受験が続くことになる。
2名の生徒は、初日午前は第2志望の中学校から受験スタート。2日目の午前は第1志望の受験。午後から第3志望の受験。終了後に前日受験した中学校の合否が発表されたが、2名とも不合格だった。おそらくこの調子だと第1志望も厳しいだろうし、第1志望の2回目はさらに合格枠が狭くなるので、現実的に考えて第3志望の合否ですべてが決まる。
私はドキドキしながらその発表を待った。
自分から合否を確認する電話はさすがにできないので、ひたすら連絡を待つだけだ。とりあえず公開されたばかりの2022年大学入学共通テストの数学Ⅰ・Aを解きながらそのときを待つ。心ここにあらずの状態で解いているので、ケアレスミスばかり。やはり算数や数学はメンタル面が大きく影響することを感じた。
ピピピピピ
電話が鳴った。時間的には間違いなく合否連絡の電話。
私は深呼吸を一度してから通話のボタンを押した。
最初の生徒からの電話は合格の吉報。
生徒と自分はスマホのこっちと向こうで大喜びだ。その後、お母さんが涙ながらに感謝の気持ちを伝えてきた。夏の成績では第3志望の合格もまず無理な状態だったので、我が子の頑張りに感動したのだろう。
それからまもなくしてもう一人の生徒から連絡が来た。
こちらも見事に第3志望の中学校に合格。受験生2人とはいえ、合格率は100%である。開校初年度としては、これは快挙といえるだろう。ただ、この実績以上に2人の生徒の努力が報われたことが何よりも嬉しかった。
そしてここで思わぬことが起きた。
2人の生徒がこのまま私の学習塾に通い続けたいと言ってきたのである。
2人とも地元の公立校に通うわけではないので、通学に交通機関を乗り継ぎして片道30分から1時間はかかる。学校の授業時間も長いし、部活にも入るだろう。とてもここに通う余裕はないと思い、継続についての話はしてこなかった。
そんな中で継続の決断に大きな影響を与えたのが、今回の合格と、
受験前に中学受験以降の話をしたことだった。
これは顧問税理士の天海さんの「先の目標を明確にしておいた方がいい」というアドバイスを受けて行ったものだ。入学後のお迎えテストの順位の重要性、公立校が3年かけて進むカリキュラムを1年半以内に終わらせて高校内容に進むこと。そして大学受験。この話を聞いて、2人とも春休みも引き続きしっかり勉強を続けていく決心をしたそうである。そして今回以上に大学受験に向け高い目標を掲げて、モチベーションはさらに高まっているとご両親は驚き、喜んでいた。
「そうか、天海さんがこの学習塾の将来にも重要なことだと話していたのは、継続のことだったのか。
自分で勝手に中学受験が区切りで、
ゴール地点だと思い込んでいて、
大切な顧客を手放してしまうところだった」