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税理士がサポート!『はじめて起業ものがたり』 「起業って何から始めればいいのか59 徳川家康の名言:得意絶頂のときこそ」

【このお話では、サラリーマンを続けていた40歳の松平はじめが、起業に挑戦し、税理士からアドバイスを受けて、成果を出すための大切な気づきをいろいろと得ていきます】

 

今回のポイント
 うぬぼれは禁物・謙虚さが大切 

 

 

4月もあっという間に過ぎ去り、世間はゴールデンウィークに突入。10連休という人もいるらしいが、自分にはまったく関係のない話で、日曜祝日すべて教室を開いて指導を行う。ただし、旅行に行く生徒もいるので出席者はいつもより減る。そのため学生アルバイト講師の2人には休みを取らせた。研修もこの期間は一時お休みとなる。

 

この時期でも塾生がまったく集まっていないのであれば、ゆっくりなどしていられないのだが、幸運なことに私の学習塾は当初の売上目標として掲げていた月50万円を達成している。塾生の成績も順調に伸びており、評判も上々。人手不足も学生アルバイト講師のおかげで解消。次なる目標となる年間1,000万円の売上も実現可能に感じるようになっていた。

 

大手進学学習塾に講師として勤めていた頃には、ここまで充実感や達成感を覚えたことはなかった。経営者として様々な経験をし、新しい挑戦をし、粘り強く取り組んできたからこそ感じられる思いなのに違いない。

 

そう考えると、もしかして自分には経営者としての才能があるのではないだろうか?

 

 

起業に挑戦するまではそんなことは考えたこともなかったが、実際やってみて、自信に満ちている自分自身に驚きを感じる。これだけポジティブな気持ちで仕事ができているのだから、さらに追い風は強くなっていくのではないだろうか。

 

「ほう、それで、わしに何のようなんじゃ?」

 

そんな中で、相談相手になってくれる顧問税理士の天海さんに電話したのだが、特に具体的な不安要素があるわけではない。逆に何もないからこそ心配になったのだ。

 

「順風満帆すぎて怖くなってきたのかもしれません。そこまで大きな成果が出ているわけではないのかもしれませんが、私にとっては驚くほど上手くいっているなという感じで、かつてないほど気持ちが前向きなんです。これでいいのでしょうか?」

 

「はじめさんがそれだけの努力を継続してきたからこその成果じゃから、胸を張って自信を持っていいじゃろう。しかし、うぬぼれは禁物じゃな」

 

「うぬぼれ・・・・・・ ですか」

 

確かにそんな気持ちにもなっている。

 

 

「荒れ果てた戦国時代に天下太平の世を築くことに成功した家康公であっても、このようなことを言っておられる。

 

得意絶頂のときこそ

 

隙ができることを知れ

 

とな。人間はうまくことが運びすぎておると、その隙を見過ごしてしまうということじゃ。

 

くれぐれもうぬぼれは禁物。

 

謙虚さを大切にすることが肝心

 

見過ごしてしまう隙・・・・・・。どこに隙があるのだろうか。

 

電話を切った後、しばらく頭を悩ませていたが、翌日にはすっかり忘れてしまっていた。そして数日が過ぎたある日、塾生の親から思わぬ電話がきたのである。

 

それは退塾意向の申し出だった。冬期講習会後に入会を決めた塾生で、通塾するようになって4ヶ月ほど経過している。成績が思うように伸びていないというのが理由のようだ。

 

確かに塾生の中では一番伸び悩んでいる。それは宿題の取り組みも雑だし、自習室の利用頻度も他の塾生に比べると低いからだ。現に他の生徒はかなり順調に成績を伸ばしているので、指導方法には問題はないと私は思い、それをそのまま言葉にして親に伝えてしまった。

 

もっといろいろな側面からその生徒を観察すべきであったし、話の展開も親の心境を考慮すべきだったのだが、天海さんの言葉通り、私にはおごりがあったのだろう。

 

この私の安易な発言と対応が思わぬ事態を招くことになる。

 

 

 

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