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税理士がサポート!『はじめて起業ものがたり』 「起業って何から始めればいいのか61 建設現場から学ぶトラブルにおけるハインリッヒの法則」

【このお話では、サラリーマンを続けていた40歳の松平はじめが、起業に挑戦し、税理士からアドバイスを受けて、成果を出すための大切な気づきをいろいろと得ていきます】

 

今回のポイント
 ヒヤリ・ハットを共有する仕組み 

 

 

生徒が置かれている状況への気づきが甘かったことと、軽はずみな不用意な発言によって起こった退塾意向の問題は、生徒や保護者、そして学生アルバイト講師の酒井も交えた面談の末、退塾という結果で終わった。日ごろから酒井が気配りしてくれていたおかげで、退塾とはなったものの、生徒も保護者もここまでお世話になったとの感謝の言葉を残していったが、私に向けられた不信感に満ちた目は変わることがなかったことが心に重くのしかかる。

 

翌日の午前中、私は重い足取りで顧問税理士の天海さんの事務所に向かった。事前に相談していた今回の件の報告と共に、気持ちを切り替える機会にしたかったからだ。起業してこれまで、何度か心が折れそうになったことがあったが、その度に天海さんに相談をして立ち向かう勇気をもらっている。もし天海さんがいなかったら、不安と孤独に耐えられずにかなり前の時点で潰れていたことだろう。

 

 

「残念ながら退塾になってしまいました。今回は完全に私の落ち度です。学生アルバイト講師に対し、研修の際にはあれだけ偉そうなことを言っておきながらこの結果ですから、恥ずかしい限りです」

 

「誰でも失敗はするものじゃ。大事なのは失敗した後、どうするかじゃの。失敗したからもう終りだとうつむく者もいる一方、この失敗を経験値として経営者としても、学習塾としても成長に繋げようと前向きに受け止める者もいる。失敗した事実はしっかりと受け止めつつも、肯定的な視点を持つことは重要じゃぞ」

 

「そうですね。今回のケースから学んだことは、日ごろから自分自身ももっと生徒の情報に敏感になっておくということです。また、そういった情報を共有することの大切さも痛感しました。これまでは学生アルバイト講師とは、どういう指導をしたのか、教えた内容や知識に間違いがないのか、もっとわかりやすい教え方がないのかといった点ばかりの話になっていたので、これからは生徒の様子について気づいたことをどんどん報告してもらおうと考えています」

 

「労働災害の話にはなるが、建設現場の重大事故に関する法則に

 

ハインリッヒの法則

 

というものがある。アメリカのハーバード・ウィリアム・ハインリッヒ氏が提唱したもので、

 

1件の重大事故が

 

起こった背景には、

 

実は軽微な29件の事故と、

 

その寸前の

 

300件の異常が隠れている

 

ということじゃ」

 

 

「1:29:300ですか・・・・・・ つまりそれ以前の300件の異常を野放しにしていたり、29件の軽微な事故を問題視していないから、重大事故の1件が起こってしまうということですね」

 

「そうじゃな。日本の建設現場などではよくそんな軽微な異常のことを

 

ヒヤリ・ハット

 

と呼んでおるな。作業中にヒヤリとしたことや、ハッとしたことのことじゃ。

 

そしてこのヒヤリ・ハットを

 

タイムリーに改善していくことで、

 

重大事故を予防している

 

「大事なことはそういった軽微な異常を早期発見し、早期改善していくということか・・・・・・ その仕組みを取り入れていく必要がありますね」

 

「学生アルバイト講師が2人も加わってくれたおかげで、はじめさんの学習塾では、今まで以上に目が届き安い環境になっておる。そのメリットをどう活かしていくのかは、経営者の手腕にかかっておるな。こんな内容の報告をしても意味がないだろうなと学生アルバイト講師に思わせないように、学生アルバイト講師の気づきを引き出すような会話やその情報の共有をしていけば、重大なトラブルは未然に防ぐことができるはずじゃぞ」

 

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