【このお話では、サラリーマンを続けていた40歳の松平はじめが、起業に挑戦し、税理士からアドバイスを受けて、成果を出すための大切な気づきをいろいろと得ていきます】
2022年も早いものでもう7月。あっという間に半年が過ぎて、後半戦に突入だ。今年は例年以上の猛暑が続く中、学校では夏休みが近づいていた。そのためこの1ヶ月はどこの学習塾でも、夏期講習会の募集一色になる。夏期講習会の募集成功が、9月からの2学期以降に盛り返す重要な鍵を握っているからである。そして夏の成功が1年の成功に直結する。
もちろん私の学習塾でも夏期講習会の内容を伝えるチラシ、DMを作成して配布。ホームページ上でも初めて参加を検討している家庭に向け、夏期講習会の仕組みや効果は大々的にアピールしている。さらに学校の登校時間に合わせてハンディングなども行ってきた。時間を作っては近郊の住宅地にポスティングも精力的に行ってきている。
今日は夏期講習会の受付開始という報告を兼ねて、顧問税理士の天海さんの事務所を訪れていた。
「中学1年生向けの説明会も前回行って感触が良かったので、この勢いでどんどん集客していきたいなと思っています。新規オープンする個別指導塾の存在は脅威ですが、そこはこれまでの実績や評判を信じて、夏期講習会の価格は下げずにいきます」
「相手の土俵で相撲をとる必要はないからの。はじめさんには頼もしい塾生がおる。そのアドバンテージを存分に活かしていくのがよいじゃろうな」
「やはり中学3年生の塾生から後輩にいろいろ声がけしてもらうようお願いしていった方がいいですよね。紹介してくれた御礼グッズについても喜んでもらえるようなものを用意しました」
「もちろん口コミが一番影響力はある。しかし、あまりガッツキ過ぎるのも見苦しいの。そこは塾生が自ら誘いたい、お勧めしたいと自発的に思って行動してくれるのが一番じゃろう」
「それはそうなんですが・・・・・・ そんな上手くはいきませんよ。ちなみに夏期講習会の受付になった申し込み生とはすぐに三者面談を行い、成績や状態を確認しつつ、夏休み中のカリキュラムを決め、さらに誘ってくれる相手がいたらお願いしていくつもりでいます。ここで波及効果があれば、募集目標達成に近づくことができますからね」
「意欲的にどんどん行動していくことは素晴しいことじゃが、募集、募集に力を注ぎすぎると、塾生への対応が疎かになってしまう恐れがある。申し込み生にすぐに面談を行い、夏休みのカリキュラムを決めていくと言っておったが、塾生にはどうなんじゃ? 塾生の夏休みのカリキュラムはいつ決めるのかの?」
「そ、そうですね。7月中旬くらいでいいかなと思っていました・・・・・・ まあ、ギリギリにはなってしまいますが」
「売上を伸ばすために新規開拓に精力的になるのはわかるが、
まずは足下の塾生満足を
優先にすべきじゃないのかの。
塾生がこの早い段階から夏休みの予定をしっかり決めて、勉強する態勢が整っていることで、塾に通っていない生徒さんもうらやましく感じるじゃろうし、そんな塾生が誘うからこそ説得力があるじゃろう」
「確かに募集優先で、塾生への対応が後手後手になってしまっていました。これだと申し込み生ばかりを手厚く指導していると、塾生の不満を募らせるリスクがありましたね。
まずは早急に塾生に対し、
夏休みに向けたカウンセリングを
丁寧に行っていきます」
「ドトールコーヒー創業者の鳥羽博道氏の言葉は参考になるのではないか?
『お客様というのは
最高の広報マン、宣伝マン。
ひとりのお客様の後ろには
常に何人もの
見えないお客様がいることを
肝に銘じておかなければならない』
とな」